むすんでひらいて

絢瀬桜華

開店準備

 弁当屋『結』の朝は早い。

 五時の開店に間に合わせるために、朝は二時に起きて仕込みを開始する。最初にすることは大量の米を研ぐ作業で、すぐには炊かずにしばらく水に浸しておく。その間に冷めても問題ないおかずを作り、米を炊きながら残りのおかずを仕上げる。

 ご飯は白米が基本だが、梅干しかごま塩は無料でトッピングできる仕様になっている。どちらも自家製のもので、つけておくか乾煎りするかだけなので片手間に作っているのだ。

 お弁当は一つ五百円で、白米のお弁当が三種類。魚と肉に分かれている日替わり弁当と、一年を通して決まっているものが一つ。野菜などの副菜はどのお弁当でも季節によってばらばらだが、馴染みのお客さんに「いつもの」と呼ばれる一年中同じものは主菜が唐揚げとだし巻き卵だと決まっている。

 白米をおにぎりに変えることも出来、これは値段は変わらない。しかしおにぎりを握るには人手がないため、基本的に先着二十名の限定品だ。おにぎりは塩、ごま塩、梅干し、昆布、ツナマヨから二つ選ぶことができる。おにぎりだけの販売は基本的にしていないが、予約ならできるというのは知る人は少ない。

 おかずだけなら三百五十円で買うことができる。その日のお弁当のおかずそのままであるが、おにぎりだけ握って来られた、お米だけは詰めて来られた、というお客さんに人気だったりする。

 午前四時五十分。開店準備が整うと、その日のお弁当のおかずを書き出して、店の扉に内側から貼り付ける。各十ずつパックに詰め、お品書きと間違っていないかをもう一度確認し。


 午前五時、弁当屋『結』、開店。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る