第2話 【転がり出した石】エピソード1

3. 高校のグラウンド・午後4時・外 2年前 6月 高2

   脇の小屋の影。

   手の望遠鏡を覗く制服の女子生徒、ののみ(16、高2)、

菜穂(なほ) 「(小声)ねぇ、片思いって辛くないの?」

   (突然)ののみ背後、同じ制服の菜穂(16、高校2年生)

ののみ「(そのまま、覗いている)辛くないよ!こうやって

   望遠鏡で見ると未来が視えるんだよ、

   彼の幸せそうな笑顔が視えるんだ!」

菜穂 「そうなんだ!私も覗いてみよ、見えるかな?」

   手で望遠鏡を作り覗く菜穂。

ののみ「(慌てて)ダメだょ、彼を覗いたら!」

   と、振り返りながら(三つ編みが揺れる)。

菜穂 「ねっ、どの子?何番?10番でしょ!」

   サッカーボールを追いかける背番号10番

ののみ「うん!」

   と、再びグラウンドを見つめる。

   菜緒、ののみの正面に立つ。

菜穂 「私は菜穂、クラスは違うけど同級生だよ、

   いつもコソコソしてて面白いね!」

   ののみの顔を覗き込む菜穂。

ののみ「・・・面白くはないよ」

菜穂 「ねぇ、告白しちゃえば!」

   がっくり肩を落とすののみ(うなだれる)。

ののみ「告白!(ため息)しようとしたよ何度も。手紙もいっぱい

   書いたし、バレンタインなんか・・・もうパティシエになれ

   るくらい!」

    XXX

   回想 ののみの家 台所

   チョコレートを仕上げるののみ

   (LOVEの文字の歪んだチョコレート)

    XXX

菜緒 「何年も?すごいね」

   青い空、白い雲が流れていく。


4. 同ベンチの周り 6月 高2

   サッカーする選手たち。

   遠巻きに見ている制服の女の子達。

   女の子達の間から突然飛び出すののみ。

   髪飾りの三つ編みを乱してののみ、愁(17、高2)

   の足元に倒れ込む。

ののみ「・・・あのぉ」

   愁の顔を仰ぐように見る。まぶたをパチパチさせる。

   子猫を見る目で見降ろす愁。

   ののみ、立ち上がるが、愁の目の前だ。

ののみ「お、お、お願いします」

   お辞儀をすると、愁の胸に頭突きをしてしまう。

    XXX

   回想 ベンチ前 直前

   ののみの手を引いてベンチの近くに行く菜穂。

菜穂 「行こう、行こう」

   ののみの腕を強引に引っ張りながら。

ののみ 「ひっ、ひっひっ・・ぱぁ・・ら・・な・・い」

   ののみ、ほとんど横っ走り。

   菜穂に気づいて近づく愁。

   ののみを、まるでハンマー投げのように、力いっぱい

   振り放す菜穂。

   旋風を巻き起こしながら、回るののみ。

ののみ「あっれ~・・・」

   XXX

   愁、胸を押さえて、

愁  「・・・いてて」

   ののみの両肩を掴んで、自分の胸から押し返す愁。

   砂まみれになっているののみ、三つ編みが解け爆発

   している髪。

   愁は、ののみの全身を上から下に見て。

愁  「(あっさり)無理」

   ベンチでタオルを選手に渡している女の子に手を振り。

愁  「玲奈!」

   振り返ったのは超美人!ミニスカート姿。

愁  「知らないの?」

ののみの声 「この高校では、NO1女子がサッカーのマネージャー、

     歴代そうやって決められていたのだ・・」

    XXX

   ののみの妄想 グラウンド

   ミニスカート姿のののみ、愁にドリンクを差し出すが無視

   される。

   玲奈(16、高校2年生)に選手たちが群がる。

   愁にドリンクを渡す玲奈。

    XXX

愁  「解った?、無理だろ」

   XXX

   校庭の脇の小屋にとぼとぼと、カムバックするののみ。

   菜穂がいない。小屋の周りを一回りしながら。

ののみ「(泣きべそ)菜穂ちゃん・・・」


5. 競技場 薄暗い夕刻 6月 高2

   催し物の準備をするスタッフたち。

   二階の観客席に座るののみ。

ののみ「(溜息)ハァ・・・」

   飲み物を持って階段を降りてくる菜穂。

   XXX

   横に座り飲み物をののみに持たせる菜穂。

菜穂 「どうぞ飲んで、どうだった?」

   隣に座り、ジュースを飲む菜穂。

ののみ「(うつむいて)マネージャー希望と間違えられた

    かも・・」

   口に含んだ飲み物を吹きそうになる菜穂。

   回想 フラッシュバック

   玲奈のキラキラしたミニスカート姿。


6. ののみの部屋(夜) 6月 高2

   可愛い小物やピンクが多いののみと妹の部屋。二段ベッド。

   女の子らしいモノの中に、数々の石達、そして、机の上に、

   お弁当ノートと日記帳、砂時計、万華鏡、愁の石。

   愁の石、逆三角形の10cmほどの石に、3分の2ほどまで

   の袋。その袋の紐に「愁」と書いた札。

   日記を書くののみ。

ののみの声 「今日初めて、愁君とお話しできました、菜穂さんの

    おかげです、サンキュー!片想いで良いって思ってた

    けど、やっぱり好きになって欲しいよ!がんばれ私!!」


7. 蔵造おやき店 日替わり 6月 高2

   テーブルに座り、だべる久美とののみ。

久美 「告白したって(大声!)、あんなに、うじうじしてたの

   に!」

ののみ「菜穂って子に押されたから・・・正確には告白できてない

   かな、マネージャー希望と思われたみたい」

   大口でおやきにかじりつくののみ。

久美 「告白したってことでいんじゃない、愁君って、硬派って

   いうか、草食系男子代表でしょう、結果は予想通りでは

   あるね(うなづく)」

ののみ「・・・(噛んでる)」

久美 「これ見て、隠し撮りだけど・・・」

   スマホの画面を、口をモグモグしている、ののみに見せる。

   スマホ画面の中、男子の写真をメクっていく久美

久美 「彼がナンバーワンでバスケ部、2番バレー部、3番駅伝

   (早送り)・・・以上トップテン」

   言い終えると、どや顔の久美。

ののみ「あれ?、愁君は?、この順序って?」

久美 「これは私の決めたランキング(笑い)、実際の人気

   でわ・・・、サッカー男子は、上位だろうね!」

    XXX

   フラッシュ ののみの回想 グラウンド

   練習するサッカー選手たち。

   愁の顔以外ぼやける。

    XXX

ののみ「愁君って何番かな、背番号と同じ10かな?」

久美 「じゃトップテンに入れとくね」

   スマホ画面 愁のサッカー中の写真。

久美 「まぁ、推薦枠で」

   とスマホを操作しながら。

ののみ「チェ!推薦で、女子のランキングって誰が決めたの?」

   と、頬をしぼめて、ジュースのストローを吸い上げ、おやき

   2個目を頬張るののみ。

久美 「さぁ、男の子達で投票したとか・・かな?男の子って器

   小さいからね!何でも比べたがるのょ」

    XXX

   フラッシュ 回想 グラウンド

   玲奈のキラキラしたミニスカート姿

ののみ「応援したいのは判るけど、ミニスカでなくても・・

   セクハラ!」

    XXX

   フラッシュ ののみの妄想 グラウンド

   ミニスカ姿で愁にドリンクを差し出すが無視されるののみ。

    XXX

久美  「(指を折って)チァリーダー・レースクイーン・

   アイドル、振袖・・・男って女に応援されたいんだよ」

ののみ「振袖で応援するって?何」

   と、久美の薬指を掴んで揺らす。

久美 「痛いよ」

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