第四話

 230年2ノ月1日に、『帝国』による『大連合』への侵略戦争である、『230年3ヶ月戦争』が勃発。その中盤、3ノ月13日に起こった、『神機』2機『レプリカ』235機を擁する『帝国』本隊と、『神機』1機『レプリカ』101機の『大連合』北部守備隊とが交戦した戦役が、『3ノ月戦役』である。


 このとき、『大連合』は国土の3分の1を『帝国』に占領され、あと3週間もすれば 首都陥落という状況だった。


 『大連合』首都と戦線の間には、非常に険しい山脈がそびえ立っているため、『帝国』軍が首都に攻め込むためには、高低差が激しく遠回りになる山脈北部のルートと、比較的地形が平坦で首都にも近い南部の沿岸地域ルートの2択しかない。


 『大連合』軍令部は、『帝国』本隊が南部に進出すると予想し、そちらに『神機』2機と『レプリカ』201機を擁する南部守備隊を置いた。


 だが、『帝国』軍はその裏をかいて、北部ルートの方に本隊を進め、南部には『神機』2機と『レプリカ』151機を投入し、『大連合』南部守備隊の『神機』2機の足止めをする作戦をとった。


 開戦を告げる信号弾とともに両軍は戦闘状態に入り、続いて互いの『神機』が戦い始めたところで、『帝国』の2機目の『神機』が投入された。


 2機目の『神機』は、「交戦の意思がない『レプリカ』を、『神機』は攻撃してはいけない」、という戦時条約を破って、逃げようとする機体にも攻撃を加えた。瞬く間に北部守備隊の『レプリカ』36機が撃破され、隊は総崩れ1歩手前の状態に陥った。


 それを見て奮起した『大連合』の『神機』パイロットは、敵の1機目を大破させて行動不能に陥らせた後、『レプリカ』を襲っている2機目と戦闘に入った。


 その3時間にも及んだ一進一退の攻防は、互いの武器が互いのコクピットに突き刺さり、両者相討ちで終わった。


 その戦闘の間に、守備隊司令官は増援を総司令部に要請したのだが、総司令部に、「首都近郊を守備する本隊を、そちらに回すわけにはいかない」、と突っぱねられた挙げ句、撤退しても構わないが、なるべく敵の数を減らせ、という無茶な命令を出された。


 それを受けた守備隊の上級将校達は、戦略的撤退という建前のもと、移動用の『レプリカ』に乗り込み、部隊を放置して逃げ出した。

 だがそれは司令部近くに潜んでいた、『帝国』の斥候の機体によって破壊され、守備隊首脳陣の全員が戦死してしまった。


 その結果、当時『大連合』正規軍の大佐であったレオンが、現場で階級が最も上位になったため、守備隊の指揮をとることになった。


 『帝国』軍は北部守備隊を戦場の南にある岩壁へ、追い込み漁をかけるかのごとく、三方から包囲しようとしていた。


 そこでレオンはまだ包囲の網が薄い、森林がある東方に火力を集中させて突破するように指示を出した。

 次に、自分が指揮する隊の12機のみを引き連れて、あろう事か、西にいる敵指令機の方へやじりのような陣形で突撃していった。


 雨あられと飛んでくる敵の砲撃を、レオン隊の全員が絶妙な挙動で回避し、一直線に指令機へと突き進む。


 切っ先の位置にいたレオンが突出し、友軍の支援砲撃をバックに、ブレード二刀流で真っ直ぐ指令機に突進していく。


 それを阻止しようと指令機の前に、2機ほど『レプリカ』が立ちふさがったが、2機ともすれ違いざまに切り捨てた。


 レオン機と1対1になった指令機は、機体正面の重機銃で応戦したが、レオン機はそれを紙一重で回避して真っ二つにたたき切った。


 指揮官を失った『帝国』軍が混乱している内に、レオン隊は即座に反転して、後方の友軍と合流して包囲を突破した。


 残り49機となった北部守備隊は、追ってくる『帝国』軍機189機に、遊撃戦を仕掛けながら首都方面へと撤退していった。


 首都周辺の『神機』3機、『レプリカ』328機を擁する、『大連合』本隊と守備隊37機が合流する頃になると、109機まで減った『帝国』軍は、侵攻を断念して撤退を開始していた。


 『大連合』軍は『神機』1機、『レプリカ』182機(レオン隊12機含む)を出して、その追撃を開始した。


 そのころ、北部本隊の大敗を知った『帝国』軍の南部部隊『レプリカ』136機と『神機』2機は、その内の1機が中破すると、即座に撤退を開始した。


 それを機に反転攻勢へと転じた『大連合』は、北西部の1部を除いて失地のほとんどを取り戻し、そこの割譲を条件に『帝国』との休戦条約を結んだ。


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