『神機』:護りし者
赤魂緋鯉
プロローグ
そのわずかな陸地に住まう人間は、似たような見た目や、同じ血族同士が集団となって国を作り、その数はもっとも多いときは200を超えていた。
古今東西、国の優劣は生産力と軍事力で決まり、どちらにも劣る国が滅ぼされることは逃れようもない宿命だった。
――神のごとき破壊力を持つ、人型機動戦車・
世界暦195年の初め、世界各地に存在する遺跡から、突如として
全世界に信仰されている宗教・『世界教』の神話に出てくる、
それを調査したところ、その内部には復座の操縦席があることが判明した。だが、何をしてもそれは機動することはなく、研究者達の頭を大いに悩ませた。
そこでひとまず、彼らは『神機』と共に出土した、古代の文字が刻まれた金の板を解析することにした。そうしたところ、『神機』の機動には、3つのものが必要だということが分かった。
そのある物というのは、純水、『聖女』とその生き血の3つだった。
『聖女』とは『世界教』における、人々を目に見えない
それを知った各国は、誘拐や倫理を無視した方法まで用い、国ぐるみで国内外から『聖女』をかき集めた。
そして、同年最終月の13ノ月13日。
満を持して明らかになった『神機』の性能は、
195年時点で、試作兵器を含めたすべての兵器を無効にする装甲と火力、ほぼ無尽蔵にエネルギーを生み出す動力源、人間を遥かに超える演算能力のコンピューターを搭載している。
といった、オーバーテクノロジーの塊だった。
そんな超兵器『神機』の存在は、この世界のパワーバランスをひっくり返してしまった。
世界で初めて『神機』を起動させたその国は、まさに無敵の兵器であるそれを用い、近隣諸国を次々と征服して領土を拡大していった。
出遅れた他の国々は、国同士を統合して新しい国を作ったり、諸国が寄り集まって連合を作ったりするなどをして対抗し、何とかその国の拡大を食い止めた。
それから5年経った頃。数少ない『神機』を喪失することを恐れ、
『神機』の優れたコンピューターを用いて開発したそれは、3つのものがなくても動かすことが可能である一方、ほぼすべての性能がオリジナルより弱体化していた。
それでも破壊力は申し分なく、人間の兵士であれば1000人、通常の戦車であれば100両単位でまとめて吹き飛ばせるほどの性能があった。
まもなくしてその量産も始まり、戦場は『神機』同士の一騎打ちから、それとレプリカを用いた集団戦へと変わっていった。
232年現在、『連合』、『自由』、『帝国』、『王国』、『公国』、『島国』の6つの超大国が存在し、それらは常にどこかで小競り合いを起こし、領土の奪い合いを繰り広げている。
232年7ノ月12日、大陸北東部に位置する『王国』は、その西隣の『公国』に宣戦布告する。その直後『王国』は、広大な平原が広がる『公国』南部から、ほとんど不意打ちの形で侵攻を開始した。
レプリカ137機と
圧倒的な物量差に押された『公国』は、国土の南半分を6週間でほとんど制圧されてしまう。
それを鑑みた国を構成する諸侯たちは、戦況を打破し領地を守るために、ため込んでいた豊富な資金を用いて、仕方なく『レプリカ』を持つ
相場の5倍にもなる破格の報酬とあって、不利な戦況にもかかわらず、計72機もの『レプリカ』が『公国』に集まった。
高い練度を誇る百選錬磨の傭兵たちの活躍により、侵攻速度を大幅に鈍らせることに成功した。
ジリ貧になるのを避けたい『王国』は、『公国』北部を領地とするファイン・H・キャクストン公爵の領地に、『神機』1機と『レプリカ』5機を送り込んだ。彼の邸宅を襲撃した部隊は、公爵の
彼女の身の安全を条件にして、『王国』軍部は公爵に『公国』への後方支援の停止を要求され、公爵はこれをのんだ。
彼は『公国』軍の後方支援を一手に引き受けていたため、補給が滞り始め士気が低下。『王国』の侵攻速度は再び加速し始めた。
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