第8話

「おい、ヤバいぞ、助さん」


「だ、大丈夫ですよ、核さんが作ったモンスターがいるのですよ?」


「……誰が戦うんだ? スライムなんかじゃあ、紙の守りだぞ」


「じゃあ、ベリー・インプをふやすのです?」


「だからそれは後でなっ!」


ああもう、進化犬は冒険者たちにシッポ振ってるし。

不審者が家にやってきても「遊んで、遊んで!」とはしゃぐダメな番犬みたいだった。


どうやら2人が入り口で待機し、2人ずつ中に入ってゆくようだ。


ふむ、賢明な判断だ。役人にしては動きもいい。

洞窟には、天然ガスが充満していて、空気を吸った途端に窒息死するようなのもあるからな。

中の2人が倒れたら、すぐに外の2人がロープで引っ張ってやらなければならない。


魔力灯やマジック・ライトを使わずに、火のついた松明(たいまつ)を掲げているのも正解だ。

松明だと、火の強弱で空気の状態が分かるのだが、魔法の光だとそうはいかない。


「なんか至る所に箱があるな、これはなんだ」


「犬の毛がついている……犬の寝床みたいだ」


「一体なんのダンジョンだ? これは」


くっそ、それは俺も疑問に思っていたところだったが、よその連中に言われると腹が立つ。


とくにこれといったハプニングがあるわけもなく、あっという間に中間地点を突破し、そして間もなく、ダンジョンの最奥。

このダンジョンを支配する核である俺まで、侵入されようとしたときだった。


とつぜん、魔導書が光を放った。


「あっ、犬をダメにする箱が進化するみたいですよ」


「えっ、このタイミングで?」


しかし、ナイスタイミング。

これ以上ないというタイミングだ。


オリジナルモンスターの進化後の特性は、俺が自由に考えることができる。


配置など考える必要もない。

出せたところで、あと1匹。


俺は、後先考えずに犬をダメにする箱をハイスペックにしてやった。


攻撃力、最大。

防御力、最大。

俊敏性、最大。


防衛戦に特化した、とんでもないモンスターの誕生だ。


「進化時、特殊スキル『融合』を強化……特殊スキル『合体』に変化する!」


さらに、『合体』によって同族モンスターを何匹も足し合わせることで、ステータスを何倍にも膨れ上がらせる。


ダンジョンのあちこちに落ちていた犬をダメにする箱は、不思議な光に包まれてお互いに結びつきあい、やがて天井に背中をつくぐらいの巨大なモンスターになった。


それはダンボールの剣とダンボールの盾を持った、3メートル近い人型のモンスター。

ダンボール・ゴーレムの誕生である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る