ただいま失踪中

@Daiou-guchokumushi02

第1話失踪前日

 その日もただただ散々な一日だった。やることなすこと全てにケチをつけられ気に食わないと思われれば殴られる。余計な事を言えば殴られる。何も言わなくても殴られる。俺も俺ではっきりものを言えない性分のせいもあって余計なにも言えなくなっていくのはある意味自然な流れだったのかもしれない。


 「それが終わったら連絡しろ」


 そういって上司は足早に会社の倉庫から去っていった。上司に告げられた仕事を黙々とこなしながら俺は一人考えていた。果たしてこのままで良いのだろうか?このままあの上司について行っても俺に未来はあるのだろうか?入社したての頃何かと目にかけてくれた方ではあるもののついそう考えてしまう。

 確かに俺は頭もよくなければ要領も悪いおまけに仕事も遅い。デキる上司からすれば俺はとんだお荷物でこういった態度をとらせてしまっても致し方ないのだろう。そう自分に言い聞かせながら殴られて痛む頭をさすりつつ仕事をこなしていった。


「ーーおかけになった番号には現在お繋ぎすることが出来ませんーー」


 耳に押し当てた携帯電話からそんな初めて聞く合成音声が聞こえてきた。所定の仕事を終え上司に連絡している時だった。はじめは連絡先を間違えたと思い名前と番号を確認した上で再度かけなおしたが結果は同じだった。なんとなく察しつつも件の文言を検索してみると予想は的中した

 どうやら俺は上司に着信拒否されたらしい。


 そこから先はよく覚えていない。会社の倉庫から自宅へ帰り風呂に入って飯を食い今日やったことをまとめてから寝た、と思う。

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