第ニ章第三話ー2

「んで、なにやるんだ?」

「プリクラ」

「ぷ、プリクラ?」


 意外な答えだったから、思わずどもっちゃったよ。

 男同士でプリクラ撮るってどうなのかね。


「今男同士でもプリクラ撮るの普通だよ」

「そ、そうなのか······」


 考えを読むんじゃないよっ。

 時代の流れが早すぎる!

 まったく波に乗れないんですけどっ。


「オレとじゃ、嫌か?」


 不安そうな声をあげ、伊津美が俺を見る。

 どうしてかな、鼓動が速い。


「嫌じゃないぞ」

「よし、入ろっ」

「あ、ああ」

「······」

「ちょ、引っ張るなって」


 拒否をしてないと分かると、伊津美は、プリクラ機の中に入り俺の服を引っ張ってきた。


「早く入らないのが悪い」

「ええ······」


 なんだその理屈は。

 プリクラ機の中に引き込まれた。

 うん、完全に女子って感じの内装だ。


「いいから近く寄って!」

「お、おう」


 さらに近づくよう声を荒らげ指示された。

 断るとめんどくさそうなので、言われた通り伊津美の肩が当たりそうなところまで接近した。って、なんかいい匂いするっ。

 伊津美の奴香水つけてるな。


「もっと近く寄らないと映らないよっ」

「このくらいか?」

「うん、いい感じ」


 こんなに今まで伊津美と至近距離になったことがあっただろうか。

 プリクラでお馴染み? の写真を撮るまでカウントダウンアナウンスが流れ、シャッター音。

 どうやら撮れたらしい。


「なんか書こうよ」

「書くってなにを?」

「······オレが書いておくよ」


 呆れられた。

 まるで、ため息でもつきそうな顔をしてペンを取り、伊津美は画面になにか書き込んでいる。


「祐」

「なんだ?」

「絶対これのことは誰にも見つからないようにしてくれ」

「分かった」


 言葉ではそう言ったが、バレたくなかったらそもそも一緒に撮らなきゃ良かったのに。

 撮った写真に加工する伊津美の背中を見ながら、俺はそう思っていた。



 ☆☆☆



 ハロウィーンか終わると、次にやって来る学校行事と言えば文化祭である。

 ウチのクラスの出し物は、長い協議の末フランクフルト屋に決まった。

 というわけで、現在本番当日。

 やはり食べ物を売っているだけあって客入りは上々。


「祐君ヤッホー」


 そんな風に思いながらフランクフルトを焼いていたら、宮城先輩がにこやかにやって来た。


「来ていただいてありがとうございます」


 素直に嬉しい。

 知り合いが来るとモチベーションが上がる。


「いえいえ。あれ、円ちゃんと住吉君は?」


 キョロキョロする宮城先輩。

 今さらながらどうして諒だけ名字なんだろ。


「先に自由行動なんです」

「そっか。じゃあ、一本もらえる?」


 一体なにが“じゃあ”なんでしょうね?


「分かりました。百円になります」

「それと、葉瑠から伝言」

「伝言?」

「もし後半自由なら一緒に行動しようだって」

「いいですよと伝えてください」


 別に断る理由もない。

 まぁ、円芭にバレたらヤバいけど。

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