3rd Season

甘いものには、コーヒーを。


 ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。

 どんな世界にも繋がっているこの喫茶店には変わった店員ばかり居る。ドラゴンメイドの料理長含めたメイドが二人と、鬼のメイドが二人、そして魔女の見習い。これもメイドだ。あとは人間のメイドも居る。まあ、それは俺とずっと腐れ縁の仲で続いてきたのだけれど。

 そんなこんなでいろいろと季節は廻っているが、この世界にやってくるお客さんは数知れず。例えばいつもプリンアラモードを食べている羊使いのヒリュウさんがいい例だ。


「……相変わらずここのプリンは絶品じゃのう……」


 ヒリュウさんは舌鼓を打ちながら、プリンアラモードを食べている。相変わらずだけれど、確かにここのプリンは絶品かもしれない。プリンから生クリームまで、すべて手作りで出来ているからだけれど、それを言う必要は無い。

 それはそれとして。


「そういえば、今日はあの鬼の子は休みかい? ……昨日は居たような気がするが」


「今日はお休みですよ。まあ、家はここですから常に居るわけですけれど。やっぱりたまには休みも必要ですからね」


「それもそうじゃのう。いやはや、それにしてもメリューちゃんは相変わらず美味しいものを作ってくれるからわしも大助かりじゃよ。不味い飯ばかり食べるわけにもいかないからのう」


 いったいヒリュウさんはどういう生活を送っているのか――そういえば一度ヒリュウさんの家に行ったことがあるけれど、それでもどういう生活を送っているかは解らなかったかな。一度話を聞きに行っても面白いかもしれない。


「……コーヒーのお代わりをもらえるかな?」


 それを聞いて、俺は頷く。


「かしこまりました」


 直ぐに温めておいたポットからコーヒーを注いだ。


「ミルクと砂糖はいかがしますか?」


「いいよ。プリンアラモードの甘味が口の中にまだ残っているものでな。別に大した問題でもあるまい。……うむ、美味い」


 コーヒーを啜ってヒリュウさんは一口。そりゃあ、そうだ。ずっとここで働いてきて、いかにどう美味いコーヒーを作れるか日々研究を重ねてきたからな。まさにこれは努力の結晶と言っても過言ではないだろう。……別に表立って言っているわけではないけれど。というより、こういうことはあまり見せびらかす努力ではない。隠してやっておくことが大事なのだから。

 カランコロン、とドアについた鈴が鳴ったのはちょうどその時。

 その鈴が鳴るということは来客か、お客様が帰ったタイミング、そのいずれか。いずれにせよ、外の世界を結ぶドアが開かない限りその鈴は鳴らないのだから。


「いらっしゃいませ」


 ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。

 世界唯一のドラゴンメイド喫茶は、今日も誰かの来店を待っているのだった。


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