17 私たちの攻防 9/25


〇2005年9月25日(土)


 朝からたくさんメール送ってしまって。だって返事くれないんだもん!

 あやねが「情けで大里君とよりを戻す」とか言うんだもん!

 このことについて反論しまくりました。うざかった?

 大里君はさ、私とあやねが付き合ってもいいって言ったんだよ。その理由は、大里君には私とあやねは付き合わないって思っているから。そして、自分に戻ってくる自信があるから。あと、すっきりするから。


「彩音が美紗都と付き合うならすっきりして、自分も諦められる。俺はそうなったら、彩音から潔く去る。でも、それはないと思う。彩音は俺を選ぶ」だそうです。

 あやねは意味わかんないって言ってたね。私もよくわからない。その自信はどこからくるわけ?

 私は、大里君と戻ってほしくない。こう思うことはやっぱりいけないこと? あやねはどう思っているのかな。

 あやねはさ、どっちつかずになった自分のことが許せなくて、大里君に対して悪いと思ったから、別れたんだよね? 違う? だとしたら、大里君と元に戻る選択肢はないと思っていたんだよ。

 よりを戻すなら、「あのときは悪いと思って別れたけど、大里さんへの想いは本当で、美紗都さんへの気持ちは薄れて……、やっぱり大里さんが好き!」という感情にならないと、矛盾してしまうよ。だから、「えええ?」と思い、焦ってしまったの。


 すんごく格好悪いね。

 私にも、「あやねが選ぶのは絶対に私!」って自信がもうちょっとあったらな。

 でもね、私はあやねに愛されている自信より、自分があやねのことを愛している自信が大きいの。それが私の一番の自信なの。支えなんだよ。本当にそうだな。わかってくれるって信じてます。


 夜にあやねと電話をしたね。

 何話したっけ? 昨日のことなのにね。

「ありがとう……ありがとう……優しいね……。優しいね……」、その言葉に救われた。涙がでそうなくらい嬉しかったよ。

 離れたくない! ずっとそばにいたい!

 そう思った。本当に……ほんとうにそう思った。あやねは私のこと思ってくれてるよ。嬉しいよ。


 こういう素直な気持ちが、一番人の心を打つんだよ。

 あっ……、私が公園であやねに伝えたことね。

「あやねと二人きりで公園でいた、あの長い長い時間は、二人だけで向き合って愛し合った時間だと思うの。大切な時間。今はまだ、あの時間は夢の中であって、今は現実の世界に戻されてしまったけれど、私は夢の続きが見たいよ」

 なんか、文章にするとくさいね。でも、気持ちは届いてくれたかな? 届いてほしいな。あやねに届けこの想い!


 あの空間を、あの時間を私は一番大切に生きています。

 あやねもそうなってほしい。本当にそう思ってほしい。

 あやねが素敵な夢の続きを見たいっていうのなら、私はいつまでも待てる気がする。

 もちろん、私は弱っちい人間で、心移りするのかもしれないけど、今は本当にそう思える。 一緒になれるまで……待っていたい。それだけ今、あやねと一緒にいたいんだよ。


 あやねとの電話を終えたら、次は大里君から電話が来ました。

 二つのこと。大里君のあやねに対する想いと、今後うちらの関係て平気なの? について。あんまり書きたくないから、書かないよ。このノートをあやねに見せるなら、大里君の想いを書くべきだとは思わないから。

 私は泣いてばかりだった。

 電話とはいえ、人前で泣いたのは、小学校の頃以来だな。あのときも、目の前にいたのは大里君だったんだ。


 大里くんね、私とあやねがお互いに想いを寄せているという、つまり女の子同士が想い合っているということについては、まだ一度も触れてこないの。あやねにもそうだよね?

 これは、優しさなのかな。そういうところあるよね。 


 電話が終わりバイトに行って、その帰り道に大里君から励ましのメールが来たよ。

 と思ったら、しばらくして今後は「彩音は俺を絶対に選ぶ!」という趣旨の、自信満々なメールをわざわざ送ってきた。しかもつらつらと。

 なんで? 突然? 

 ほんとうに、突然どうしたの?

 表現が過剰で、攻撃的で。さっきと電話とニュアンスは異なっていて。

 なんでだろうと思ったんだけどね、そういえば電話で「今日限りでこの話は二度としない」って宣言していたんだよ。


 すべてを吐き出しておきたかったんだね。

 わかるなその気持ち。私は大里君の言葉に傷ついたけど、わかってあげなきゃいけないんだよ。だって悪いのは私なんだから。こんなに嫌なことをさせているのは私だもん。

 私は大里君とのつながりは深いから、この話しがすべて終わった後、元の関係に戻れることを信じて疑いません。

 大里君も今日ね、「昔あんなことあったなあ……って話せるようになったら最高だし、そうなるように努力はするさ」って言ってくれたんだ。

 本当に嬉しかった。ありがとう大里君。

 逃げたら、向かい合えなくなったら終わりだからなってこともわかってくれた。

 だから、だからあやねは私たちの関係を気にしないでほしい。これは、私と大里君、両方の願いだと思う。

 

 そしてその夜、4時くらいまであやねとメールしてたね。私は、大里君に攻撃されたあとだったから、なんだか最後はちょっとおかしかった。彩音は美紗都を選ばない! 絶対に俺を選ぶって、あれだけ言われると、自信がなくなって、不安で不安でしょうがなくなってしまって。

 大里君とよりを戻したあとでも……とかさ、本当に意味わからん。なぜ今そんな話をする必要あるのよ。うーん。大里君にとってはしてやったりなのかな。「あやねにはいま彼氏がいなくて……」という話も、あやねを悲しませるだけなのに、一度使ってしまった。ごめんね。

 でもね、あやねがどっちを選ぶのか考えているあいだだって、私はあやねと遊びにいったりしたいって話は、正直本音なの。思い出して欲しいんだけど、あやねが「一緒にアキバに行ってみよう笑」みたいに言ってたでしょ。お互いが、なんとなく恋愛感情があるってわかりはじめた頃の話ね。


 私はそのとき、二人で出かけられるわけないじゃん。って思ったの。

 でも、ほんとうは遊びにいきたい。あやねといるの楽しいんだもん。だから、二人を選んでいる時でさえ、遊びたいっていうのはそういう意味ね。自然でしょ。ただ、私と二人きりでいたらあやねは苦しいって思うのかな。それなら私は求めないけれど。

 そういえば大里君に、「彩音が苦しむから、二人とも距離おいてやろうぜ。苦しむんだぞ。可哀そうだろ! しつこいって嫌われるぞ!!」って言われたんだ。

 たしかに、あやねは私がそばにいると辛いときもあるかもしれない。でも、そばにいてくれる喜びのほうが大きいって、そう思ってくれていると信じたい。

 大里君と私の立場は違うよ。そもそも、あやねに対する愛し方が全然違うんだから。

 だから、私はあやねのそばにいることを選ぶよ。

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