醒めない夢

@satou06

第1話 ~冒険の続き~

水面の中に大きな火散が舞い、黒霧の突風が大河の中に差し込み心身を包み込む

「やめろ!お前ただの王子だろっ!おまえっ・・・なんで

 なんでお前がバケモノの相手をしてるっ!・・・なんで俺がそこにいないっ!」

ヂリィィィィィィィィィ

「うああっ!目覚ましっ目覚まし時計っ!」

「ガンガンガン!」

なんど押しても鳴り止まないそれにイラだつこの男、黒髪・短髪・中背・ボロキレ・名前

「ああええっと夢の内容なんだっけ・・・結構面白かったんだけどな、

 そうだ黒い竜だ15cm位の羽が生えた感じだ」

「アルバン!アルバン!!」

ドカドカっと木板を踏み砕く様に軋む音を立て駆け上がりアルバンの部屋の鉄扉を抉じ開けようとする

「アルゥッ!早くここを開けろ!茶工場に最近入り浸って面妖な機会なんぞ作りおって!」

「ああっまた叔父さん癇癪起こしてるよ・・・こりゃきっと仕事で嫌な事があったな」

ヒソッと苦虫を噛み砕いたような顔でつづける

「叔父さん幾ら高収入でもこんだけ家壊しちゃ破産するよっ!いい加減子供に当たるのやめなって!」

「うるさいっ!誰のおかげで食っていけてると思ってる!」

「こりゃ、俺の思ってた以上にこの家末期だな 家出しよう・・・そうしようっ!」

アルバンは窓を開け屋根に付いた紐を手繰り寄せて滑車をにぎる

その瞬間鉄扉が破られ、窓際にいるアルバンを掴もうとする

「じゃあっ叔父さん精々散財のし過ぎには注意!俺への遺産もちゃんと残しといてねえええぇぇぇ!」

アルバンが握った滑車は港方向に勢い良く降下するその様子を怒りの眼差しで見ながら叔父が言う

「いままで金にうるさかったのはそれが理由かあああぁぁぁ!」

その大声はバルトリ・ソレンにやまびこの様に街に響いた

人口100万が住み年2回空中に浮かぶこの王都は商業・工業・農業・情報産業が全て集まる

ただひとつ無いとすれば娯楽であろうか・・・

その周山に生まれたアルバンは幼くして両親を無くし都市に住む叔父に引き取られた

そのときに決心した「自分の見た夢をそのまま実現させる」という夢がある


ざわざわ

「アイゴ アイナメ アイブリ アオザメ アオスジエビス アオダイ何でも揃ってるよ!」

「アケビ アセロラ アボカド アンズ イチゴ イチジク ウメ ミカンとれたてだ!」

水・果物産物の屋台が盛んなこの露店路はいつもにぎわっている

「おい、お前のとこのスタンド曲がってね?」

「は?」

「お、おいあれなんか赤い蹴鞠みたいの絡まってないか?」

「違う!あれは蹴鞠じゃなくて人だっ!人!」

露天50つを支える支柱となっていた露店の時計台の尖端に

服が絡まって吊るされた人を心配してか野次馬が集まってきた

その声にきずいた蹴鞠が目覚めた

「ん?え?どこ、ここ・・・きゃあああああっ!」

「え?女の子?」

「おい!じょうちゃん!絶対うごくな!」

「今助けに行く!」

「やめろ!死体袋が2つになるだけだっ!」

「ってめ!いまなんて!」

「無理だろあそこまで30mはあるんだぞ冷静になれよ・・・」

現実を見て多くの人たちがどうすればいいのか呆気にとられている

「王都の飛空挺が帰ってくるってさ!」

「本当か!?じゃあそれに乗っている人たちに頼めば!」

「そうだ!」

「じょうちゃん!良く聞け!もう直ぐ飛空挺が帰ってくる!それまで耐えるんだ!」

「コクッコクッ」

怯えて声すら出せない蹴鞠はベタつかせた手を必死に冷たい鉄塊に寄せる

その頃、アルバンは・・・

「なーんか港のほう騒がしいな、この様子じゃ下りられないかなあ

 いや!どんな逆境でも行ってやる、待ってろ!リヴェット!俺の夢の舞台!」


飛空挺の帰還連絡から3分

「なあ、おかしいんだ」

「なにが?」

「飛空挺に救難連絡はしたんだが一向にこないらしい」

「は?」

「こないって、どういうことだ?」

「いやだから」

「「邪魔だ邪魔だ!」」

「おお、これは王騎士様!実はあそこに女の子が」

「知ってる」

「ただすごく怯えてまして・・・」

2人の男女が野次馬に割ってはいった

そして片方の、大男は石を拾い上げ投石体勢に入る

「えっなにおっ

ブゥン!

「きゃっ!」

「よぉし!1ヒットォ!」

放たれた石つぶてが女の子の体に当たり男は喜びの声を上げる

「な、なにしてんだお前!」

「次ぎお前だぞはずすなよ?」

「分かってる」

もう一人の女が大男と同じ体勢に入る

「もう我慢できない!ふざけるなお前らっ!殺すきかっ!?」

「そうだが何か問題でも?」

「・・・」

更に呆気にとられた憎しみ混しりの眼差しを無視して大男はつづける

「いつまでたっても解決しいんじゃ商売も出来ないんだ

 ここをどこだと思ってる?世界の要バルトリ・ソレンだぞ?」

「みんな、おちついて冷静になりましょうさっきのは誤解で盗賊か何かと間違われたんでしょう?

 でに誤解は解けた。それに飛空挺に救難をっ」

「【落とせ】だそうだよ」

「は?」

「君らの大好きな王騎士様は”厄介者を切り捨てろ”とお考えだそして

 俺はそれに従うだけ何も悪くない、悪いのはお前たち庶民 うぅん完璧!」

「っざけんな!停留所から1kmもないだろ!そのくらいっ」

「ここまで言ってもわかんないの?つまりねえぇぇえ!

 小汚いガキを飛空挺にのせるなんてありえないっていってんの!

 わかったらやれ!」

「・・・はい」

眉間に皺を寄せ息を切らした大男を前に再び女は投石体勢に入る

「やめろお!」

「きゃあっ」

「はっはっはー!2ヒット目だ!これでもう落ちるなっ!」

石を避けた拍子に先端に絡まっていた服が取れてしまった

そこにガチャガチャと白く巨大な鎧を纏ったキレ顔の騎士がやってきた

「まだやってるのか?」

「ああっ・・・あああ・・これはエデュオン様

 おい、お前ら王騎士様だぞ礼はどうした礼はっ!?」

「どうゆうことだ、あいつは王騎士じゃなかってのか?」

「っちいままで嘘ついてたのかよ!」

ガンッ!王騎士が聖剣を床に突き立てると露店街にいる人間が声を発さなくなる

「おいそこの、騎士見習いのデカブツ答えろ【何故そこにいる?】」

『この露店からの救難で蹴鞠のような人がいて助けて欲しいと

 その返答として王都よりその蹴鞠を【落とせ】と指令がきたためです。』

【で?なんでいまだにあそこにいる?】

『石を何度も投げて落とそうとしたのですが、こいつらが邪魔をしてきて・・・』

【石を投げた?あの子に?】

「おおおおおおっとまらないいいいっ滑車が止まらないいいいっ!」

何kmもある鉄ワイヤーに研磨され摩擦がなくなった滑車は勢い良く街の時計台にぶつかる

「ぎゃああああああっ」

  「きゃああああああああっ!」

アルバンと女の子の悲鳴が露店に響く

「あなたなんなの!?」

「なにってえっ?」

「いきなりぶつかってきたでしょ!」

「君がこんなとこにしがみついてるからだろっ!」

「あなたもでしょ!」

「違うよ!僕は家出してきただけ!」

「とっとりあえずこっち捕まりなよ」

落ちそうな女の子は滑車に掴まることでかろうじて何を逃れた

【おい!お前!】

「えっ?なに?他にもぶつかった人いた!?」

【俺の質問に答えろ!】

「ごめん!何言ってるかわからない!もっと大きな声で!」

「剣音が届かないとダメなのか・・チッ」

白騎士のエデュオンは大男の脇剣を抜き取ると滑車に向けて投げる

ブチッと縄が切れると2人が悲鳴を上げながら落ちる

「リヴェット!つかまれ!」

「え!?・・・お兄様!?」

「え?リヴェッ・・・お兄ぃ!?」

「うわああぁぁぁ・・・・・・はぶぅっぶっっぶ!」

「スタッ」

2人は無傷で1人は擦り傷まみれで地上に降りた

「痛てててっなんか待遇違いすぎませんか?お兄様ぁ」

「大丈夫かいリヴェットあぁ・・合いたかったよ」

「お兄様・・・」

「あの聞いてます?」

ガンッ 聖剣が突き立てられる

【黙れ!】

アルバンの体勢がグラっとが崩れ倒れる

(なんだこれ!喉が焼けるみたいに痛い!)

「そこでずっと黙ってろ・・・フフッおいでリヴェット王都を出るんだ」

「お兄様ちょっ!お兄様やめってっ!!!」

「どうしたんだい?リヴェットああ、

 そうか忘れてたよ君に石を投げたやつがいたらしいね」

【大男答えろ!】

【石を投げたのは全部で何人だ?】

『っふ・・・2人です』

【そいつらはどいつだ?】

『・・・・っわっわわ』

【おかしいな教えられるはずだぞ?見習い騎士】

『あの卑しい女見習いですぅっ!王都の命だからとて

 私はエデュオン様の妹君にあんなマネ

 許されるわけ無いと反論したのですが、これも王騎士になる為の定めっ!

 無理に命令されただけのわっ私が咎められることなどっ』

グチャ   ドザッ  ドクドク

重骨が折れ腸が破裂する鈍い音がその場の者、全員に張り付く

「なら命を賭してでも断るべきだったな

 次ぎ・・・そっちの女ね」

(まッ待て!だめだっ声が出ない・・・でも体は動くっ!)

騎士見習いの女に近かずくエデュオンの前にアルバンは立ちはだかる

「どうした?何故かばう?喉の痛みをもっと酷くして欲しいのか?

 それともお前も妹に・・・?

 いやどっちでもいいか死んでくれ」

「やめて!お兄様!」

アルバンの前にリヴェットが立ちはだかる

「リヴェット・・・ダメだよこれはごっこ遊びじゃない処刑なんだどきなさい」

「お兄様、お願い帰って」

「リヴェット・・・それは無理だ」

パンッ

「ぐっ」

「貴様!なにをしたっ!」

アルバンの手には煙を吹く鉄筒がにぎられている

アルバンはリヴェットと女見習い騎士を引っ張り露店下の下水管に走る

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