私と私とあたしの…
Jami
第1話 嫌ではないけど…
そんなことは言われなくても分かっている。
過去は過去。過ぎたことは過ぎたこと。
それでも願わずにはいられないのは、こんな「身」になっているから?
「ったく!キリがねぇ!」
地面に背中を叩きつけられながらも即座に立ち上がり周りを目だけで見渡し唾を吐き捨てる。若者そうな言葉からは想像しにくい外観と声色の甲冑を身に纏ったロングヘアーの青年は目の前には黒々とした奇異なる生物とそれらに立ち向かう、しかし、既に息絶え絶えといった仲間の姿がそこにあった。
「お嬢!回復なんとかならないのか!?」
いつもおきまりの敵との遭遇だが、普段に比べて数が異様。もしくは、とても、硬い。弱音は吐きたくないが青年は自分の後ろに控えるバニーガールのようなウサギ耳の少女に叫んだ。
「わ、分かってるわよ!…きゃぁぁ!って、あ!………ごめんなさい…」
お嬢と呼ばれたウサギ耳の少女がボロボロになりながら杖を振ろうとした瞬間、空から矢が狙いを定めて降ってくる。幸い軽く掠めた程度であったが、傷ついた箇所から光があふれ、ウサギ耳の少女が消えたかと思ったら、片手に剣を携えたこれまた黒いヘアバンドをウサギの耳のようにした少女が現れた。それは、戦力にはなるけど回復はできない、という残念な結果である。
「レイナ!大丈夫?」
「何とか平気だけど…ファムもいないしエイダもいないしどうしよう」
未だ傷一つ付いていないウサ耳ヘアバンド、通称アリスと化したレイナは「とことん突っ込んで倒しまくるしか方法はないわね」と駆け寄った猫、もとい猫人間のような少女にため息混じりに言った。
「僕、まだコネクトし直せるから…誰か回復ヒーロー持ってる?」
外身は猫少女だが中身は少年、エクスは傷つきながらももう一人分残っている旨を伝える。この場において回復のできるヒーローをコネクトできるのは自分しかいなかったのだ。
「え?そうか…。ひとつあるわ!」
そう言ってレイナはじわじわと近づいてくるヴィランを見据えながらカバンを探り一枚の栞をエクスに渡す。
「あ、これ…」
栞を渡されたエクスは固まった。
「お嬢!早く加勢してくれー!」
「もぅ!今行くわよ!じゃあエクス、頼んだわよ!」
盾で攻撃を凌ぎ、斧でヴィランに応戦している青年、タオの叫びにレイナは疲れはてた足を奮い立たせてヴィランに向かっていった。
「新入りさん何してるんですか!早くしてくださいよ!」
栞を片手に固まるエクスに、弓で空中のヴィランを叩き落としまくるこれまた猫人間、通称チシャ猫が叫ぶ。
「あ、うん。ごめん!」
そう言いながらエクスは自分の空白の書を開く。真っ白な
「……………」
しばらくもしないうちに光が解け、現れたのは、青い髪のふわりとしたドレスを纏う……
「(シンデレラ……いや、別に嫌じゃ…ないけど………)」
エクスは内心複雑であった。
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