第23話 診察
いつもより、大きな目覚まし時計の音で目が覚めた。
この前、乾電池を取り替えた影響だろうか。
わたしはベッドから起き上がり、昨日出したばかりの秋物から、どれを着ていこうかと選ぶ。結局、一番取り出しやすい場所にあった洋服を選んだ。
そして、サラダを作って朝食にする。
燃えるゴミをまとめて、家を出ようとドアを開けたら、雨が降っていた。わたしは傘を左腕にかけて、鍵をかける。右手で燃えるゴミをつかんで指定された場所へゴミを捨てる。
傘を広げて歩きながら、左足のことを考えた。雨の日などは、骨折したあとが痛むと聞いたことがある。わたしの場合はヒビだが、今日はもう痛くはなかったし、違和感もなかった。もしかしたら、そろそろ治ってきたのかもしれない。
会社について、出入り口の横にある傘立てに傘を入れてから、中へと入る。
タイムカードを打って、いつものようにお茶を入れる。
今日は雨だからなのか、同僚たちがなかなか来ない。わたしはいつもと同じくらいの時刻についたのだが、雨の影響で地下鉄が混んでいるのかもしれない。
今日の予定を簡単に確認してから、わたしは午前の仕事をはじめた。
月曜日の午前中は、雑用が多い。例えば、顧客に送付する請求書などの書類の三つ折などの本当の雑用だ。枚数は多くはないが、あまりにもずれていてはみっともないので、こんな作業にも神経を使ってしまう。それが終わったら、絶対に間違えてはいけない封筒に入れる作業に移る。宛名と、請求先が一致していることを確認しながら、封筒に入れていく。
このほかにも雑用を片付けていたら、お昼になっていた。
「今日は雨だね。地下鉄が少しだけど遅れてるし、混んでるし、始業に間に合うか冷や冷やだった」
わたしと同い年くらいの子の発言だったが、やはり雨の日は大変なのだなと思った。
「そういえば、胃もたれは治ったの? 前に、胃腸科に通ったって聞いたけど、それからどう?」
「あれ? そう言えば何ともないから忘れてた」
「良かったね、じゃあ治ってきてるんだよ」
「うん、そうだね」
気になって聞いてみたが、胃腸科に通うくらい酷い症状だったのに、忘れていたということは、もう大丈夫なのだろうとわたしは思った。
健康でいることが一番というのは、わたしの祖母の口癖だった。今になって、それが分かるようになってきた。
午後の仕事をしている最中、ふと外を見ればまだ雨が降っていた。今日は一日中雨なのかもしれない。
定時になり、わたしは傘立てから自分の傘を探して、整形外科を目指す。
受付で、「今日は診察を受けてから、レーザー治療になります」と言われて、久しぶりに診察を受けることになった。
わたしの順番になり、医師による診察を受ける。
「だいぶ良くなっていますね。今週の金曜日あたりに、レントゲンを撮ってみましょう。その結果しだいでは、もう来なくて大丈夫ですよ。金曜日は空いていますか?」
「はい、金曜日ですね。また、来ます」
「分かりました。お大事にしてください」
良かった。これなら、整形外科に通わなくてもよくなるかもしれない。
レーザー治療を受けてから、会計へ行く。
それから、傘を片手にわたしはスーパーへ行く。
今日はお豆腐をめんつゆと、ゆずで煮て食べることにした。明日の朝はどうしよう。しばらく考えても、食材を見ても、思いつかない。仕方がないので、カットレタスと、ブロッコリー、食パンをかごに入れて、レジへ行く。家にあるジャムを焼いた食パンに塗って食べることにした。
スーパーを出て、帰宅する。忘れないうちに傘を玄関の床に広げて干しておく。
今晩使う食材以外を、冷蔵庫にしまう。
それから、今日はもう遅いので先に入浴をすませてから、お豆腐をめんつゆで煮ることにする。しあげに、冷凍しておいたゆずの皮を散りばめて、できあがりだ。かなり簡単な料理だが、わたしはこれが好きだった。
後片付けをして、もう何もすることがなくなったのは九時少し前だった。
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