サイレン・トレイター

カズキ

プロローグ

僕の前には、一つの世界がある。



世界は、大きい



大きな世界と相対し、僕は気が付く



僕の前に存在するこの世界に、「僕」は含まれていないということに。



この世界はあまりに大きい



僕という存在は、世界の側からしたら、無いに等しいのだろう



風が舞えば宙に舞う塵のように、世界はわずかの関心も寄せることはない。



けれど



もし、僕以外にも、世界という枠組みに存在出来ないでいる人がいるなら



もし、僕と同様に、大きな世界と相対し孤独を感じている人がいるなら



もし、「愛情」というものを知らない人がいるなら



そのときは、君の傍にいよう。



僕が君のためにもう一つ、小さな世界を創ろう。

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