5話
「セルジオ! セルジオ!!」
「セルジオさん!!」
目を覚ますと、ジードとニーニャが泣きそうな顔で彼を見ていた。
『俺、倒れたのか・・・・』
手の中にメダリオンの感触がある。
『夢じゃない?』
「ジード、ニーニャさん、俺ダンジョンに行かないといけない」
昏倒から覚めて直ぐの告白に、二人は更に心配そうに見つめる。
「お前、頭でも打ったのか?」
「お、お水です」
ニーニャが渡す柄杓から水を飲み起き上がる。
「なんか良くないことが起きているみたいなんだ」
心配する二人に構わず話しかける。
「家畜小屋に来てくれないか?」
セルジオは石鋤を抱え、首からメダリオンを下げると二人を家の横の家畜小屋へ導く。
「「!?!! 魔物」」
少し元気になったガリガリのインプが二人から隠れるように干藁の影に隠れる。
「ニーニャさん、これ」
セルジオは巻物をニーニャに渡す。
「・・・・魔法のスクロール、もう魔力は残ってないけど酷く珍しい物よ」
眼鏡を直し、マジマジと見つめる。
「これ、ドラゴンの皮かも・・・・
もしドラゴンの皮なら、これだけで金貨1000枚に成るわよ?
セルジオさん、畑に私お店開いていい?」
商魂逞しいニーニャ。
「おれ、村長呼んでくる!」
ジードは羽が生えたように、駆けて行った。
・・・・
目まぐるしく環境が替わる。
どうもセルジオは丸一日倒れていたらしく、村長からも酷く心配された。
村長が息を切らし駆けてくる。
「はぁはぁ・・・・
なんじゃ?魔物が出たとか言いおって・・・・
冗談じゃ済まんぞ!・・・・はぁはぁ 」
・・・・
インプと目が合う村長。
「うわ!・・・・インプか?」
『ピギィ』返事をし、ちょこんとお辞儀するインプ。
「・・・・確かに魔物じゃが、それにしても小さいのぉ」
両手で包み込めそうな大きさの、愛嬌の有るインプに毒気が抜かれてしまう。
セルジオは村長とニーニャ、ジードの三人を連れ、夢の話をしながら大石の場所へ向かい、蓋を動かして見せた。
「う、ウゲェ・・・・」
一番近くに居たジードが突然嘔吐する。
ゲロには赤いものが混じっている。
「!!!!」
セルジオは急いでメダリオンをジードに掛けると蓋を閉じ、ジードを担いで家に運ぶ。
「医者を!」というニーニャをジード本人が止め、深呼吸をする。
彼の紫の顔色が次第に元に戻り、呼吸が楽になったようで咽ながらも尋ねてくる。
「セ、セルジオ、おまえ、あれ、なんともないのか?」
強い瘴気がゼリーの様に詰るダンジョン。
そこから染み出す物でさえ、十分に逝ける毒性を示していた。
「あぁ・・・・
それに最近、飯をそんなに食べなくても平気になってる」
「おい、それっておかしいぞ」
「俺もそう思う。
この石鋤を使い始めてからそうだんだ。
古いものだから何か有るのかもしれないけど・・・・」
「「「・・・・」」」村長とニーニャが固まる。
「俺って、墓守らしい。
いや、ちゃんと言うと墓守の血筋らしいんだ。
そして400万程の墓を作らないといけないらしい」
「そ、それはなんとも・・・・
夢で請われたのだろう? わしには信じられん話だ」
村長も冷や汗を垂らしながら、言葉を紡ぐ。
「あのぉ、とんでもない話なのは分かるのですが・・・・
これはここに居る私達だけの秘密にしませんか?」
ニーニャがおずおずと話す。
「あぁ、俺はセルジオさえ無事なら構わないよ」
口の中を噛んだのか、プッと何かを吐き出しジードが答える。
「言っても信じてもらえんだろうな」 村長も同意のようだ。
「私もおじさんには適当に言い訳するから、お店の件、真剣に考えてね?」
ニーニャは恩を売った気にでも成っているのか前のめりでセルジオに問う。
少し状況を説明しないと、と気軽に考えていたセルジオだったが、
色々と話が進んでいく事に全然ついて行けない彼だった。
・・・・そして、最初の場面に戻る。
両親の塚の傍にもう一つ塚ができた。
石鋤を担ぎ家に戻ると、もう夕刻。
入り口の板を下げ、いつものように水甕から柄杓で水を飲む。
「おぃ、セルジオおるか?」
小屋の戸口から村長の声がする。
「はい」
「今日はどうじゃった?」
「まだ1体だけですが、両親の墓の側に埋葬しました」
最初に踏み抜いた遺体を麻袋に詰め、回収し墓穴に収めた。
どこかの魔法使いなのか、ローブを着た遺体の下半身は無くなっていて半分しか回収できてない。
多分、辺りにあったザラザラしたものが下半身かもしれない。
変わったことと言えば、埋葬した後の石鋤が少し光っているように感じる。
インプはまだ家畜小屋に居て、掃除や家畜の世話を手伝ってくれている。
遺体の回収をするために連れて行こうとしたが、数歩下っただけで前と同じ状態になり、再び重病人の様に成ってしまった。
当面は彼独りで頑張らないといけないらしい。
ジードは大工の息子と言うだけあって、小屋や家畜小屋を手直しし、いまは大石を囲む塀を作ってくれている。
ニーニャは・・・・
埋葬時に掘り起こした古銭を預かり、都に飛んで帰った。
去り際に、「いろいろ買い揃えてくるから、絶対他の人にお店ださせたらダメだからね!!」と何度も念を押し去って行った。
村長はあれから、家に来てはお茶をしてのんびり過ごし帰って行く。
そして、青年はこれから毎日ダンジョンに降りて行くのだった。
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