擲弾⑤

 帝国軍将兵が扱う小型爆弾。手榴弾や手投げ弾とも。

 モデルはドイツ帝国軍制式の柄付手榴弾Stielhandgranate


スペック

・重量595g

・全長365mm

・直径60.5mm

・炸薬トリニトロトルエンTNT170g

・信管4~5秒遅延信管

・加害半径10m


 ドイツ帝国軍が1915年から運用した手榴弾。

 24型柄付手榴弾Stielhandgranate 24、もしくはM24と呼ばれる1924年に制式となったものが有名だが、初代のM15(1915年制式)の他に、M16、M17、M43までのバリエーションが存在する。


 本手榴弾の特徴は、なによりもその形状にある。

 炸薬が詰まった円柱状の鉄製炸薬容器の下に取り付けられたその木製の柄は、なによりも目立つ特徴だろう。

 この柄は、手榴弾の投擲を容易にすることで射程の延伸を図ったものであり、同時期の柄の無い手榴弾では10~20mがせいぜいのところ、本手榴弾では30~40mの距離まで投擲が可能である。

 その代わり、この長い柄は運搬の際に邪魔になる事が多く、同じ弾薬箱に収まる数量では柄の無い手榴弾に劣る。


 また本手榴弾は対人攻撃が主たる用途ではあるが、一つの手榴弾の周りに、幾つかの柄を取り外した手榴弾をワイヤーで固定する事で(集束手榴弾と呼ばれる)、限定的ながら対戦車攻撃が可能である他、この応用で、手榴弾に燃料缶をワイヤーで固定する事により即席焼夷手榴弾とする事もあった。


 本手榴弾は1915年の採用から、WW2の終戦までドイツ帝国軍、ドイツ国防軍などで運用された。


 余談ではあるが、本手榴弾はその形状から連合国兵士より「ポテト・マッシャー」という渾名でしばしば呼ばれていたが、当のドイツ軍兵士らもポテト・マッシャーに似ているとは思っていたようで、それどころか、実際にポテト・マッシャーとしてジャガイモ潰しに使用されている記録写真さえ残されている。


 さらに余談ではあるが、本手榴弾のような柄付手榴弾は前述の通り嵩張るのが嫌われ、WW2戦後に柄付手榴弾を採用した国は僅かであった。

 しかし、その僅かな国の一つはお隣の中華人民共和国、中国である。

 中国は1920年代の国共内戦以来、ドイツから輸入した柄付手榴弾やそのコピー生産品を、国民党軍と共産党軍の双方で多数投げ合い、その馴染みからなのであろう、今日でも柄付手榴弾である七七式木柄手榴弾を運用している。

 ブルパップ式アサルトライフルの九五式自動歩槍とデジタル迷彩の〇七式迷彩服という近代的装備の中国軍兵士が柄付手榴弾を投擲する様は中々シュールである。


 さらにまたまた余談であるがこの中国製柄付手榴弾、つい最近に中国の陜西省のとある村人が、15年もの間に渡って六七式木柄手榴弾を胡桃割りに用いていた事が判明、ちょっとしたニュースになった。

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