第17部:風雲児 都の星で ひと暴れ
#00
「ふぅん…あんたにも、弟がいるのか」
銀河皇国中央行政府『ゴーショ・ウルム』の星帥皇宮。その展望室で、そう言ったノヴァルナは、星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガに向き直った。
「うむ。名はジョシュア…ジョシュア・キーラレイ=アスルーガ。今はヤーマト宙域のウロヴォージ星系で暮らしている。確かそなたの一つ年下のはず」
「ウロヴォージ星系?」
「現関白のコーネリア家が領有する荘園星系だ。そこで考古学を学んでいる」
「へぇ。気楽なもんだな」
「星帥皇家は代々そうだ。星帥皇を継がぬ者は、できるだけ政治から遠ざかるしきたりとなっているからな」
ノヴァルナとテルーザの初会見。グータッチを交わしてからの話の流れで、話題は互いの家族へ映っていた。ノヴァルナは少々意地悪くテルーザに言い放つ。グータッチを交わして“ツレ”となったからには遠慮なしだ。
「だけど、あんたが使えなくなったら、その弟君とやらが、新しい星帥皇になるんだろ? あんたより政治の才能があったら、どうするよ?」
対するテルーザも、ノヴァルナとの友人付き合いに、少しは馴染んで来たようであった。表情も明るく、軽口を返す。
「さて。その時はまた『ライオウ』で、悪党退治を始めるかな」
「だから、そいつはやめとけって」
やれやれという顔で引き留めるノヴァルナ。「ハッハッハッ…」と軽やかに笑ったテルーザはそこで、僅かに視線を展望室の大窓へとやった。
「実はな…余は弟とは、ほとんど会った事がないのだ。生まれてこの方な」
「そうなのか?」
「したがって、弟がどのような人間かも、よく知らぬのだ」
それを聞き、ノヴァルナは自分と同じか…と思う。自分にも幼少期に離れ離れにされた弟のカルツェ・ジュ=ウォーダがおり、育てられ方の違いが生んだ確執が、いまだに尾を引いている。小さくため息をついたノヴァルナは、苦笑いを含んでテルーザに告げた。
「弟…いいヤツだったらいいな」
▶#01につづく
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