第10部:辺境の独眼竜
#00
雷神の咆哮にも似た、幾筋ものビームがソーマ家の宇宙要塞『ミノヴィーグ』の、エネルギーシールドに突き刺さった。すでに過負荷状態が限界に達していたエネルギーシールドは、その集中砲火に耐えられずに一気に崩壊する。
アッシナ家からの要請に応じ、タームラン星系進攻のために艦隊を本星に集結中であったソーマ軍には、僅かばかりの艦艇しか残されておらず、それすらも早々に潰滅した今、もはや宇宙要塞は丸裸同然であった。そもそもナヴァロン星系へ向かっているはずの敵が、ここにいる事が想定外なのだ。
「ええい。全てのBSIを出撃させろ! 敵を取り着かせるな!」
要塞司令官の憔悴した声が命じ、切り札として温存していたBSI部隊が、発進口から次々と射出されて行く。ソーマ軍主力BSIの『アマギリ』が20。その親衛隊仕様機が2。そして簡易型のASGUL『コルネッド』が40機と、それなりの数だ。
だが敵は―――
ダンティス家の主力艦隊は圧倒的な数であった。艦艇数は六百を超え、出撃して来たBSI部隊も艦艇とほぼ同数だ。
迎撃に発進したソーマ家のBSI第1中隊長サンガー=シュメギは、第2中隊長ウーコム=キザークに通信回線を繋ぐ、二人とも乗っているのは親衛隊仕様機である。
「キザーク。敵のBSI部隊の中に、総司令官機の信号がある」
「なに? わざわざ自ら出て来たというのか? この状況で」
「ああ。考えられんが、これぞ好機。奴さえ倒せば勝ちだ。総員で集中攻撃をかけるぞ!」
だがその直後、爆発的な加速を見せた敵の総司令官機が、単独で突撃して来たかと思えばポジトロンパイクを一閃、第2中隊長キザークの『アマギリSS』を真っ二つにしてしまった。艶やかな漆黒のボディに、金の蔓草模様も鮮やかなダンティス軍のBSHO。その名を『ゲッコウVF』という。
「!!!!」
驚愕するシュメギ。敵の総司令官を討ち取って逆転を図ろうとしていた矢先の出来事に、誰もが凍り付く中、敵の司令官は映像付きの通信を送って来た。
「アハハハハハ! どうした雑兵ども。怖気づいたか!」
乱暴な物言いをするその総司令官は、右眼を黒革の眼帯で隠した端正な顔の若者だった。ダンティス家の若き当主、マーシャル=ダンティスだ。その隻眼が放つ光に圧倒されたシュメギは、茫然とこの若者の通り名を口にした。
「辺境の…独眼竜!」
▶#01につづく
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