【本日の仕込み】ポテトサラダ
カチリと音を立ててつまみを捻ると、火が上がる。
中火に調節したそのコンロの上にフライパンを乗せ熱してから、オリーブオイルを円を描くように注いでいく。
「よし、こんな感じで……」
手に取ったのは
片面が焼けたのを確認し、フライ返しで裏返す。甘塩で熟成されたその紅鮭の身から滴り落ちる脂が、脂のりの良さを改めて実感させてくれる。
両面がこんがり焼かれたその鮭をフライパンから取り出し、皮と骨を取り除き、丁寧に身をほぐしていく。そう、今焼いた鮭は本日これから来店される予定の常連、熊吾郎の為にいつもお出ししているポテトサラダに使う鮭である。
鮭をほぐし終わったら、別のコンロで皮ごと茹でていた小ぶりのじゃが芋の皮を剥き、薄く切り、冷ましておく。
玉ねぎは極薄切りにして十五分程度、水にさらしておき、時間が経ったら水気を切る。玉ねぎは辛味が少なく甘みが強い淡路島産のものを使っているのでインカのめざめの甘さを決して壊さない。
そしてこの後はマヨネーズ作りである。
まずボウルに卵黄を二個投入。そこに小さじ一杯の水と白ワインビネガーを大さじ一杯入れる。それからサラダオイルを少しづつ垂らしながら、
ゆで卵はたっぷりめのお湯に生卵と塩を入れ、強火で加熱。沸騰したら八分ほど弱火で火にかける。
出来上がったら、これら全てを混ぜ合わせ、最後に味を調え、仕込みは完了だ。
「よし、こんな感じかな……」
また今宵も熊吾郎に酒を付き合わされるのだろうな、と狐太郎は考えながら出来上がったばかりのポテトサラダをスプーンで掬い取り、口へと運ぶ。その瞬間。一口食べただけで分かる、芋独特のコクのある甘みと鮭の塩気が口いっぱいに広がった。
「ふふっ」
それから嬉しく思っているような、困っているかのような、そんな苦笑めいた表情を浮かべ、他の仕込みに取り掛かる狐太郎なのであった。
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