心理戦

木沢 真流

第1話 電話の奥の真実

「お、龍、久しぶり。どうした? こんな突然電話なんかかけてきて。何かあった?」


「いや、ちょっとな。お前の声聞きたくなってな」


「何か、キモいな。お前そんなキャラだったっけ?」


「高校時代の親友が、10年振りに電話してきたってのに、キモいは無いやろ」


「……あぁ。……でも、本当に何も無いんか?」


「え? 本当に無い。何で?」


「……え、いや。久々だからかもしれんけど」


「しれんけど?」


「……うん。お前何か変やぞ」


「変やないって。本当にどうもない。勘ぐりすぎやって」


「お前、まさか……。死のうとしてるやなかろうな」


「おい俊、何を馬鹿なこと。そんなんやないって」


「なあ、頼むからそんなことは止めてな。もし何かあるんやったら、今からでもそっち飛んで行くから。な? 死んだらどうにもならんて。頼む、約束してくれ、な? 龍」


「大丈夫、大丈夫やって。じゃ、またな」


 俺は息苦しくなって、思わずベッドから飛び起きた。

 額をこすると、汗でぐっしょり濡れていた。


 またあの夢だ、ここんとこ毎日見ている。


 あの日、あの電話の後、龍は自殺した。

 何で俺は止められなかったのだろう、あの時龍の異変に気づいてやれば、

 すぐにあいつの所に飛んで行っていれば、こんな事にはならなかったかもしれない。

 夢の中で助けようと何度も何度も叫んでも、結果は同じ。

 あいつは電話を切った。そしてその後自殺した。

 今日も夢の中でさえ、俺はあいつを助けられなかった。


 ここ数日まともに寝ていない。

 仕事のミスも増えてきている。

 医者からもらった安定剤もほとんど効果がない。

 このままではどうかなってしまうのも時間の問題だ。


 でも仕方ないのかもしれない、助けられなかったのは自分のせいなのだから。


 きっと今夜も夢を見る、今度こそは助けられると信じて。




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