10月31日 ハロウィン

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年10月31日は「ハロウィン」である。


 さて、諸君らはハロウィンの事を如何にご存じだろうか。日本人の中にはハロウィンを仮装し渋谷で騒ぐ日として認識している者もいるが、今一度正しく知っておいた方がいい。


 ハロウィンとは、元を正せば古代ヨーロッパのケルト族の風習が元となっている。彼らは10月を一年最後の月としている。つまりはハロウィンは大晦日に行われていた行事という事になる。

 夏の終わりであり冬の始まりであるこの大晦日、日本の盆の様に死者の霊が帰ってくると信じていたケルト族は死者と生者の区別がつかないように動物の毛皮を被ったりマスクを身につけたりしていた。これが現代の仮装へと繋がっている。


 ハロウィンと言えばカボチャをくりぬいたジャック・オー・ランタンが有名であるが、実は本場はカブを使っている。コロンブスがアメリカ大陸を発見した後、アメリカでカブの栽培をしていなかった為カボチャに変わったと言われている。


 ちなみにジャック・オー・ランタンとは、口が達者で嘘つきであったジャックと呼ばれる農夫(一説では鍛冶屋)が元になっている。

 ジャックはこのハロウィンで悪魔を罠に嵌め、自分を地獄に連れて行かないように契約を結んだ。だがしかし、彼の死後、天国から入国拒否をされ、当然ながら地獄にも行けず、仕方なしに現世へと戻り、カブ、あるいはカボチャをくりぬいてランタンを作ってはイングランドの沼地をさまよっていた。その姿からいつしか彼はジャック・オー・ランタンと呼ばれるようになり、今ではカボチャのランタンが魔除けとなった。


 日本ではあまり見ない光景だが、トリックオアトリートと子供が訪問し、お菓子を手渡す風習がある。アメリカではこの際、市販のお菓子しか手渡してはいけない決まりが出来ている。なぜならば、手作りのケーキやりんご飴の中にカミソリが入れられると言う痛ましいニュースが相次いだためである。悲しい事に、子供達には封が開けてある物や安全を確認できない者は捨てるように言い聞かせられている。


 どうだろう。意外とハロウィンについて知らない事があったのではないだろうか。これらを読めば、如何に渋谷で騒ぐ若者たちが的外れな事をしているかがわかると思う。

 だが、時にカブがカボチャに変わったり、お菓子の風習が出来たりと、その時代によって記念日も形を変えていくものだと私は思う。今から10年後、20年後、どんなハロウィンが催されるのか楽しみである。




 今日はハロウィン。特別な一日である。

 我々は本日を祝福し、過ごさねばならないだろう。

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