10月28日 フィラデルフィア計画

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日、2017年10月28日は「フィラデルフィア計画」である。


 歴史と言う者は主に文獻に記され後世に語り継がれるが、中には信憑性に欠ける物もある。今回語るフィラデルフィア計画も、その内容から実際に起こったとは信じられず、所謂都市伝説の域を出ていない。

 だが、もしもこのフィラデルフィア計画が真実であったならば——なんとも夢のある話だと、私は思う。


 時は1943年10月28日、第二次世界大戦の真っ只中のペンシルベニア州フィラデルフィアでの出来事である。ニコラ・テスラが設立した実験を引き継いだのはジョン・フォン・ノイマン。どちらも名前をどこかで聞いたことがあるかと思う。


 海上に浮かぶ護衛駆逐艦エルドリッジで大規模な実験が秘密裏に行われていた。実験内容は新型の秘密兵器、磁場発生装置テスラコイルを用い、レーダーに対しての不可視化、つまりはステルス化を可能にするための実験だった。

 簡単な原理を説明すると、強力な磁場を人工的に発生させ、レーダー波を無効化させようとしていたのだ。海上、海中、そして空中に至るまで、レーダーに敵が映らなくなるという事が脅威であったのは言うまでもない。


 実験が行われると、計画通りに駆逐艦エルドリッジはレーダーから認められなくなった。実験は成功したと見えたその時、海面から緑色の光がわきだし、次第にエルドリッジを覆っていく。次の瞬間エルドリッジは浮き上がり、発光体は幾重にもエルドリッジを包み、姿はぼやけて完全に目の前から消えてしまった。

 エルドリッジはレーダーどころか、その場から完全に消え去ってしまったのだ。

 エルドリッジの出現が確認されたのは、そこから2,500km以上も離れたノーフォークである。瞬間移動したエルドリッジは数分後にまた元の場所に戻ってきたと言う。


 エルドリッジの乗組員たちは、体が突然燃え上がった、衣服だけが船体に焼き付けられた、甲板に体が溶け込んだ、発火した計器から火が移り、火だるまになった、突然凍り付いた、半身だけ透明になった、壁の中に吸い込まれた、体が物体にのめり込んだ等、艦内は地獄絵図となる。また、生き残った船員も精神に異常をきたし、唯一無事に生還できたのは鉄の隔壁に守られた機械室にいたエンジニアだけとなる。結果、この実験は行方不明・死亡16人、発狂者6人と言う惨劇を招いた。

 当然ながら政府はこの事実を歴史上から隠蔽しようとする。


 フィラデル計画が世に知れたのは、1956年にモーリス・ケッチャム・ジェサップと言う作家に一通の手紙が送られてきた事が原因だと残されている。

 差出人はカルロス・マイケル・アレンデと言う人物で、そこにはフィラデルフィア計画を含む、「レインボー・プロジェクト」の内容が克明に綴られていたという。


 手紙を受け取ったモーリスは、それから三年後に謎の自殺を遂げる。

 アメリカ海軍は差出人のカルロスを探すが、その時には見つからず、後に本人を名乗る男が名乗り出るが、その語る内容が支離滅裂であった為、真偽の程は定かではない。一説によると、事実ではあるが、カルロスが追手からの追跡を恐れ、詐欺師を演じていたとの説がある。


 にわかには信じられない話ではあるが、もしこれが事実であったならば非常に興味深いとは思わないだろうか。都市伝説とは言われているが、火のない所に煙は立たぬとも言う。諸君らも、機関には気を付けろ。エル・プサイ・コングルゥ。




 今日はフィラデルフィア計画。特別な一日である。

 我々は本日を祝福し、過ごさねばならないだろう。

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