8月7日  鼻の日

 やあやあ諸君。

 私の名は塚本。塚本ジュリエッタと申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 本日2017年8月7日は「鼻の日」である。


 鼻の日は日本耳鼻咽喉科学会が1961年に制定した一日であり、各地で専門医の講演会や無料相談会等が行われている。

 諸君らもご存じの通り鼻という器官は、五感の一つ、匂いを感じる重要な器官である。ところが、我々は鼻について詳しくない。


 例えばこんな話を知っているだろうか。人間の鼻の穴は2つ存在しているが、実際に機能しているのはどちらか片方だけであるという話である。実際に指でも手のひらでも鼻の下に用意してみて欲しい。そのまま鼻呼吸すると、息がかかるのはどちらか片方であるはずだ。もしかかるとしても、右と左で違いが感じ取れるだろう。

 これは自律神経でコントロールしている鼻甲介びこうかいが、常にどちらか片方の穴を膨張し塞ぐためである。ごろんと横に寝転がればわかりやすい。地面と鼻を水平にした際、正常ならば地面側にある鼻の穴が塞がる様になっている。


 ところで、優れた嗅覚を持つ生き物と言えば犬を思い浮かべるだろうが、実は人間の嗅覚も充分に優れている。人間の鼻は約一兆の匂いをかぎ分けられると言われており、言葉に出来ない匂いも数えきれない。

 おいしそうなにおい。うまそうなにおい。食欲の湧くにおい。不味そうなにおい。食べられなさそうなにおい。腐ったにおい。主に我々の鼻が最大限生かされるのは食事の際だろうが、実はこの嗅覚、極めればとんでもない匂いをかぎ分けることが出来る。

 それは他の人間の恐怖、性的興奮を表す匂い。汗や分泌液から、人間でもそこまでかぎ分ける事が可能だそうだ。

 

 これだけ優秀な器官でありながら、自分の鼻を直接見る事ができないのがなんだかとても悔しく思える。

 鼻は顔の中心に位置し、印象にも大きく係わる。今日は日々使い込んでいる鼻を労わって鼻に当ててやる、鼻にかけてやるのも悪くないかもしれない。




 今日は鼻の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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