7月5日 ドリー誕生
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
本日、2017年7月5日は「ドリー誕生」である。
ドリーとは1995年のこの日にスコットランドのロスリン研究所で生まれ、2003年に安楽死をするまで、6年と言う生涯を送った一匹の羊の名である。
安楽死に至った理由は、ドリーが肺疾患を患っていた為である。検死の結果、その肺疾患はヒツジ肺線種である事が確認される。これは羊にはよくある病であり、一般的な死因であったと言える。では、ドリーが他の羊と何が違っていたのか。それは生まれてきた方法である。
ドリーは世界初の哺乳類の単細胞クローン羊として生を受けた。人により作られたクローン羊である。6歳の羊の乳腺細胞を移植し、そこから作られた為、巨乳で定評のある歌手のドリー・パートンの名前が付けられた。
そもそもクローンとは何なのか。わかりやすく言えば自分自身の姿形、思想、好きな物なんかを想像して欲しい。簡単に、本当に簡単に言えば今想像した自分とまったく同じ生き物がクローンである。同一の起源、遺伝子を持った自分とは非なる存在、それがクローンだ。
『ルパンVS複製人間』を見ていた私は、いずれはそんな未来もやってくるのかもしれぬと思っていたが、まさか自分が生きているうちにそんな技術が現実に起こるとは想像だにしていなかった。
ドリーが誕生した後、馬や牛など、大型哺乳類のクローンが次々と生み出された。この技術が今よりさらに発展すれば、絶滅危惧種の保護や、愛していたペットの蘇生までもが可能になる。
そして最終的に行きつくところは人間のクローン。まさに複製人間、マモーの様な人間の登場だろう。
生命の複製、遺伝子の保存。そして不老不死。
人間はまたしても神に一歩近付きつつある。
今日はドリー誕生、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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