6月27日 ホアンホアン出産

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 近頃の話題のニュースと言えば、現役AKBの結婚宣言や、女性議員の罵声。小林麻央さんの訃報など、そのどれもが注目を集めすぎる程話題に絶えないが、それらと同じくらい大きなニュースが、上野動物園のシンシンの出産である。本日、2017年6月27日は「ホアンホアン出産」である。


 ホアンホアンは1980年に上野動物園に来園したジャイアントパンダである。父、フェイフェイと人工授精の末妊娠。1985年の6月27日に日本で初のパンダの出産を成功させる。だが、生まれたチュチュはホアンホアンの下敷きとなり短い生涯を終えてしまう。

 翌1986年に、また人工授精によりホアンホアンは一匹のパンダを出産する。名前はトントン。名前を公募したところ、27万通の応募が寄せられた。トントンは無事に育ち、「木登りが大好きなおてんば娘」となる。

 1988年には3匹目のパンダ、ユウユウを出産する。ユウユウはその後に北京動物園へと送られ、代わりに中国からリンリンが来日する。トントンとリンリンで番いを作るものの、出産には至らなかった。


 私は先日上野を訪れ、アメ横で食事をしたのだが、街中にはパンダのポスターが、またパンダの着ぐるみを着た呼び込みが立っており、シンシンの出産に喜びの顔を見せていた。

 シンシンにとって出産は今回で二度目である。初の出産時は、肺炎で子供を亡くしてしまったが、今回はどうやら順調そうだ。


 これだけ話題になるのだから、パンダを繁殖させるのはとてつもなく難しい事のように思える。だが、実はパンダを12頭も繁殖させた動物園がある。中国でなければ、オランダでも、アメリカでもない。和歌山県である。

 そう。実は日本のパンダは東京、上野動物園だけではなく、兵庫県、神戸市立王子動物園。そして和歌山県のアドベンチャーワールドにも存在しているのだ。だがなぜか、和歌山では双子まで生まれたと言うのにまったく話題にされていない。そんなところに愛くるしいパンダの裏に隠れた大人の黒い事情を考えてしまう今日この頃である。




 今日はホアンホアン出産、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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