5月8日  万病に利く薬が発売された日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 生まれつき持病があるもの。生活習慣が不規則なもの。突発的な病にかかったもの。先進国、日本。医療は発達し、様々な不健康に対抗し、多種多様な薬が売られているこの国。私も子供の頃から、定期的に飲み続けている薬がある。本日、2017年5月8日は『万病に効く薬が発売された日』である。


 薬を飲むことが苦手な方が多いだろう。だが、私は自分から買いに行くほど、この薬が好きなのである。コンビニが普及し、どこでも手軽に買えるようになったのもそんな理由に当てはまる。


 これが発売されたのは1886年の事だった。今とは主成分が異なり、私は飲んだことはないが、法律で禁止される前はコカの葉、つまりは微量のコカインが含まれていたそうだ。アメリカ・アトランタで薬剤師のジョン・ペンバートンが発明し、当時は頭痛薬として発売されていた。


 人気が出るにつれ類似品が増えたが、製造方法は厳密に隠されてきた。アトランタの某銀行の貸金庫に閉ざされ、先ほど言ったコカインの不使用といった変更はあったものの、それ以外の目立った変更はないそうだ。

 成分表についての守秘は、重役2人がこの製造方法を記憶し、片方が突然死しても、もう片方がそれを絶やす事がない様、同じ飛行機に2人が乗る事を禁じている。と言った都市伝説まであるほどである。そこまで人には言えない危険な物でも入っていると言うのだろうか。


 と言っても、私はこれを愛飲し続けるだろう。何を隠そう今現在もこうして飲みながらこの小説を書いている。気分転換、疲労回復、なによりも想像力を掻き立てる万病の薬。やはり、仕事終わりは『コカ・コーラ』に限る。




 今日は万病に効く薬が発売された日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る