4月30日 ヴァルプルギスの夜

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。



 

 社会的ブームを引き起こした『魔法少女まどか☆マギカ』と言うアニメを諸君らはご存じだろうか。見た事がなくてもその名前くらいは聞いたことがあるんじゃないだろうか。特にパチンコスロットをする人ならなおさらだろう。このアニメは来たるXデーにワルプルギスの夜と呼ばれ、強大な魔女が降臨し世界を滅亡させてしまうのを主人公達がどうたらこうたらする話なわけだが、実はこのワルプルギスの夜には元ネタがある。本日、2017年4月30日は『ヴァルプルギスの夜』である。


 ヴァルプルギスの夜とは、北欧・中欧で行われる五月祭の前夜祭の催し事の事を指す。翌日の5月1日は魔封じの聖人ヴァルプルギスの聖名祝日であり、ドイツの伝承では、魔女・魔術師たちがブロッケン山に集まって大規模な祭を開き、聖ヴァルプルギスに対抗すると言った一日である。


 自分の無知を晒すようで申し訳ないのだが、少し前にソクラテスが知らない事は悪い事ではなく、知らない事を知らないふりをする事が悪だと言っていた気がするので語る。私はまどか☆マギカを視聴した時、ワルプルギスの夜と言うのが完全に創作の出来事だと思っていた。こうして毎日今日が何の記念日なのかを調べるようになり、そこで初めてこの日、ヴァルプルギスの夜を知ったのである。


 昨年ヒットした映画『君の名は』も、小野小町の和歌と、男児と女児を入れ替える古典『とりかへばや物語』が少なからず影響していると言う。つまり、私が何を言いたいのかと言うと、物語を作る上で歴史上の出来事や古作を流用するとそこにある種の深みが生まれるのである。


 少なくとも私は、このヴァルプルギスの夜と言う日を知り、もう一度まどか☆マギカを見たくなったし、とりかへばや物語の話を知った時、新海監督は様々な分野から物語を研究しているんだなと感心したものだ。

 物語を丸写しするのは勿論駄目だが、良い創作をする為には、より多い知識を持った方がやはり有利なんだなと感じた今日この日である。




 今日はヴァルプルギスの夜、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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