4月29日 昭和の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 今では誰でも簡単に小説を新人賞に応募できるようになった。インターネットでファイルを添付して送るだけである。私は何回か自分が書いた物をそれらに送った事があるのだが、ただただ落選しましたとだけ通知されるだけだった。

 だが、今回は違った。いやまあ、落選したと言うところは変わりないのだが、MF文庫新人賞なるものに『犯罪者達の鎮魂曲』を応募したところ、送られてきた評価シートには事細かに採点、コメントが書かれていたのである。最初から最後までちゃんと読んでくれている事が伝わってくる内容だった。そして規定で細かくは言えないのだが、続きが気になる。良く出来ていると書いてくれてあって、改めて人に評価される事の嬉しさに気付けた所存である。是非諸君らもMF文庫新人賞に投稿しては如何だろうか。おすすめである。

 とまあ、それは置いといて、本日、2017年4月29日は『昭和の日』である。


 本来であれば今日は『みどりの日』であった。1989年に崩御した昭和天皇。生物学者であり自然を愛した昭和天皇をしのぶ日として、昭和天皇の誕生日である今日4月29日が『みどりの日』として制定されてあったのだが、昭和天皇を偲ぶという趣旨が無かった為、これは5月の4日に変更し、2007年より本日は昭和の日となった。


 よって今日は昭和天皇を称える日であるわけだが、諸君らは昭和天皇の事をどれだけ知っているだろうか。年号は天皇が崩御するまで続く。昭和が64年まであった事からわかるように、昭和天皇は歴代天皇の中で一番在位期間が長く、そして最も長寿であり87歳でこの世を去った。第二次世界大戦後、敗戦した日本の象徴である昭和天皇が正装をし、隣にいるマッカーサーがラフな格好をしている写真はあまりに有名である。


 天皇と言うとかなり硬いイメージがあるが、昭和天皇はその中ではかなり自由気ままな人と言う印象を受ける。だが、時にはそれが問題視される事もあった。

 例えば、戦後にアメリカからの使節が皇居新宮殿について感想を述べたとき、「前のはあなたたちが燃やしたからね」と皮肉を返したと言ったエピソードや、博物館を行幸した際に記者団が一斉にフラッシュをたき、その様子を撮影しようとしたところ、「君たち、ライトをやめよ!」と記者団を叱ったなど、今の天皇と比べるとかなり自由だ。時にはある小学校を視察し、学校側がなにかおもてなしをと考えたが、食料が乏しく恐る恐るさつまいもを昭和天皇に出したところ、意外にもこれを大層気に入ったそうだ。後日、皇居にて料理人にさつまいもを所望し、料理人は気をきかせて皮をむいて差し出したところ、「皮がおいしいのに……」と、しょんぼりしてしまったと言うかわいいエピソードもある。


 問題発言や、気ままな行動によって、人によって無能だとか、ぼんくらだとか、そんな言われ方をしてしまう昭和天皇であるが、終戦後、マッカーサーに会った昭和天皇はこう語った。


「私は、日本の戦争遂行に伴ういかなることにも、また事件にも全責任をとります。また私は日本の名においてなされたすべての軍事指揮官、軍人および政治家の行為に対しても直接に責任を負います。自分自身の運命について貴下の判断が如何様のものであろうとも、それは自分には問題ではない。構わずに総ての事を進めていただきたい。私は全責任を負います。」


 能ある鷹は爪を隠すとは良く言ったもので、国民を愛していた昭和天皇は、わざと親しみやすいような行動をとって国民と距離を近づけていたのではないだろうか。私は、非常に人間味溢れる昭和天皇が大好きである。




 今日は昭和の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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