4月20日 青年海外協力隊の日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
1965年のこの日に発足した青年海外協力隊。先進国である日本から2000人を超すボランティアが、アジアやアフリカ、中南米を中心とした発展途上国へと、国作りを支援し活躍している。青年海外協力隊の募集年齢は20才から39歳まで。その募集倍率は約2,5倍。そしてここに、そんな倍率の試験を落ちた人間がいる。本日、2017年4月20日は『青年海外協力隊の日』である。
やあ諸君、人間生きていくには助け合う心が大切だとは思わないかね。私が青年海外協力隊へと自らを売り込んだのは今からおよそ5年ほど昔の事であった。当時私は無職。学歴もなければ、努力をしなければとれないような資格も何一つ持ち合わせていなかった。結論から言って私はこの審査に落ちた。まあ当然と言えば当然である。ボランティアとは言え、交通費や生活費がかかる。タダで海外に遊びに行けるなどと不純な事を考えていた私の様な何の期待値も見いだせないプータローより、使命感を持った人間を選ぶのは当然。当たり前の話だ。
タダで遊びに行けるからという理由以外にも、私がこれに応募した動機はある。それは今後の人生において勉強になる事があるから。とか。広い世界を見て自分の可能性を広げたい。とか。ましてや自分自身の力を世界の為に役立てたい。など。そんな理由があればどれだけ人に話せた話で合っただろうか。悲しきかな、当時の私は派遣後の手当が第一の目当てだったのである。
実はこの青年海外協力隊と言う制度。数年の職務を満期まで耐えきると約200万円の手当が当の本人へと振り込まれる。当然その金は派遣先ではなく日本からだ。
つまりはあの時、もし私が選ばれてしまっていたら、ロクに役に立たない人間を海外に送った末、生活の面倒まで見た挙句、お土産に200万円までプレゼントすると言う、ボランティアに送った人間をボランティアすると言う、まるで訳の分からない状態になっていたわけだ。今冷静になって考えてみれば、英単語ですらまともに覚えていない私が現地に行って出来る事など、ほんとに飯食って寝るくらいのものだったろう。青年が海外に行き怠惰に過ごす日常に協力しているだけである。
と言っても、信念ある若者が海外で活躍している事もまた事実。他国との友好関係に一役買っているのも揺るぎない現実である。願わくば、私のようなものを採用し、派遣先で日本の恥を晒す事がない様に祈るばかりである。
今日は青年海外協力隊の日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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