4月8日  忠犬ハチ公の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 人間と犬は、古くは狩猟目的として関係を気付き、今なお親密な間柄にある。犬の言語は未だ翻訳することは出来ていないが、犬たちとの長い歴史の中、深い信頼関係を感じさせるエピソードも存在する。本日、2017年4月8日は『忠犬ハチ公の日』である。


 忠犬ハチ公の日は、忠犬ハチ公銅像及び秋田犬群像維持会が制定し、1936年から慰霊祭が行われている一日だ。

 ハチ公とは、東大農学部の上野英三郎博士に飼われていた秋田犬の名前である。上野博士の存命中は、玄関先や門の前で上野博士を見送り、時には渋谷駅まで送り迎えすることもあった。そして、上野博士が1925年5月に突然亡くなった後も、毎日渋谷駅前で主人の帰りを待ち続ける一途な姿に人々に感銘を受け、忠犬と呼ばれるようになった犬である。


 諸君らはハチ公像を見たことがあるだろうか。1日50万人が横断すると言われる世界最大の交差点「渋谷スクランブル交差点」の近くにあるその銅像前には、常に多くの人が立ち並んでいる。その人々の多くは、最後まで主人を待ち続けた忠犬、ハチ公と共に誰かを待っているのだ。まさに待ち合わせには絶好の場所である。


 話は変わるが我が家には猫がいる。勿論飼っているし餌もあげている。だが撫でようとすれば逃げるし、私の帰りを待っている素振りもない。一体上野博士とハチ公の間の絆はどうやって生まれたのか。それを私に教えてほしい。忠猫とまではいかなくとも、せめて多少なりの絆を私も築きたいものである。




 今日は忠犬ハチ公の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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