3月22日 世界水の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 今迄は0時きっかりに更新していたこの小説であるが、最近更新時間が遅れている事に気付いている者はどれ程いるだろうか。出勤時間までの限られた時間早起きをし、この小説を書くことに意味があるだろうか。迷わず書けよ。書けばわかるさ。一日でも更新する事が出来なくば、今までの努力は水泡と化すだろう。本日、2017年3月21日は『世界水の日』である。


 世界水の日とは、1992年の国連総会にて制定され、翌年1993年より実施されている国際デーの一つである。湯水の如くと比喩されているが、我々の命に欠かせない水もまた有限であり、地球的な視点から水の貴重さを今一度見つめなおす記念日である。


 さて、どんなに貧乏な諸君らの家にも蛇口くらいはついているだろうが、そこから水が出てくるまで、水がどんな旅をしてきているのか興味を持った事はあるだろうか。好奇心旺盛な子供の頃はそんな些細な事が気になっても、大人になるにつれどうでもよくなり、興味を無くしてしまう方が大半だろう。


 よく下水道と言う言葉を耳にする。下水と聞くと汚いイメージを持つだろうが、それと逆に『上水』と言う水が存在する。この上水とは、川や湖、ダム湖水、浅い地中を流れる水や浅井戸水や深井戸水を浄化して送られる、つまりは飲料用の、一般的な蛇口から出てくる水である。

 対して『下水』というのはトイレから排出される水や、調理洗濯で使用された後の生活排水等の事を指す。その間に『中水』があり、水洗トイレに使われる様な、飲料用ではない水がある。


 これらは全て我々が通行する道路下をパイプを伝い、浄水場から下水処理場へと行き来しているわけだが、よくよく考えると家から出ればその下を、家族及びご近所方々の糞尿が流れていると考えると少々吐き気がしないでもない。


 自宅周辺に下水処理場の無い家は、一体どうやってそこまで下水を送るのかと言うと、地下に埋められたパイプの傾きによって自然と流れる仕組みになっている。水が高いところから低いところに落ちるのは自明の理だが、そうやってある程度の深度まで下らせ、パイプでまた地上付近へと押し上げ、また傾きによって自然と水を目的地へと流すのだ。


 人間と水とは魚と水、切っても切れない関係にある。普段当たり前に利用している水道水であるが、それを普及させた苦労も労力も計り知れないものがある。だが、我々の大半はその事実を知ろうとせず、下水のように不透明な認識のままだ。

 水道水に限らず、歴史を、仕組みを知るという事はそのものへの理解となり、古川に水絶えずと言う様にいずれ諸君らの力となるだろう。私のこの小説の様に、コツコツと力を蓄えず、付け焼刃の知識に頼っていては、背水の陣では焼け石に水である。




 今日は世界水の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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