3月12日 財布の日
やあやあ諸君。
私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。
諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。
私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。
平成の初期、異様に大きいズボンのポケットに、ジャラジャラと小銭を直に入れる事がファッションとされ流行ったのをご存じだろうか。ドラマでそれを見て、溢れるワイルドさに憧れた私は、早速財布から現金を抜き抜きポケットに押し込み、出かけ先で落としたのか、気づけばポケットの中身が全て無くなっていたと言う悲しい過去を背負う男である。本日、2017年3月12日は『財布の日』だ。
財布の日は、312《さいふ》の語呂合わせの元制定された一日である。さて、諸君らはどんな財布を使っているだろうか。やはり財布は出先に必ず持つものであり、少しばかりはこだわりたいところだ。良くネットでバリバリと音を立てるマジックテープの財布がネタにされてはいるが、どうだろう。まさか諸君らは使ってはいるまいな。
財布に入れる物と言えば現金である。人間は現金が好きだ。故に財布には様々なジンクスがまとわりつく。使っているだけで金が貯まる財布、お札を逆向きに入れると出費が抑えられる、蛇の抜け殻を入れておくとお金が入ってくる等。蛇の抜け殻ならまだなにかの言い伝えの様で少しは信じようがあるが、私が中学生の頃はなぜかコンドームを入れておくとお金が貯まると言った訳の分からない迷信が流行っていた。
ちなみに財布の使い始めに適した日と言うのもある。立春であったり寅の日であったり、効果の程は定かではないが、財布を買い替える予定のある諸君は一度調べてみるがいいだろう。
私が現在使用している財布とはもう10年以上の付き合いになる。一応はブランド物であるが、ネットオークションで購入した物なので真偽の程は不明である。だが、非常に使い勝手が良く、恐らく私はこの財布が無くなるか爆発でもせぬ限りは一生使い続けるであろう。
財布を開くと数枚の千円札と小銭が入っていた。この小銭は私に使用されると、人の手から人の手へと渡り、私の想像もつかない旅をする事になるだろう。もしかしたら、今私が握る百円玉が、いつかは今まさにこの小説を読むあなたの元へと届くかもしれない。
硬貨にとって、一人一人の財布は次に使われるまでの宿の様なものである。硬貨にとって居心地の良い財布であれば、硬貨の世界にて噂が立ち、噂を聞きつけた硬貨達がその財布に集まって来るやも知れぬ。
今日は財布の日、特別な一日である。
我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。
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