3月6日  山陽特殊製鋼戦後最大の倒産、永仁の徳政令

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 多額の借金を抱える人の多くは、借り入れ当初の計画では、すぐに返却出来る予定であったと語る。ではなぜ、人は金を返すことが出来ないのか。勿論返済の見通しが甘かった、予定外の出費がかさんでしまった等あるが、大抵の場合は借りる側は素人であり、貸す側はプロであるからと言う理由がしっくりくる。本日、2017年3月6日は『山陽特殊製鋼が戦後最大の倒産をした日』だ。


 山陽特殊製鋼は兵庫県姫路市を拠点とする鉄鋼メーカーであり、特殊鋼メーカーと呼ばれる鉄鋼メーカーである。1965年、約480億と言う多額の借金を抱え、会社更生法の適用を申請する。当時、戦後最大と言われた倒産であり、山崎豊子先生の小説、「華麗なる一族」に登場する阪神特殊製鋼のモデルになっている事でも有名だ。


 480億と聞くと、軽い気持ちで借りた一万二万、返さなくてもいいのではと思ってしまう程のスケールだが、それはお勧めしない。悪質な所で借りた暁には、知らぬ間に借金が雪だるま式に膨れ上がり、気づけば一夜限りのギャンブルクルーズに参加していたと言う話も聞かぬでもない。


 よく、前向きな借金と言われる車のローン。実業家である堀江貴文氏が語っていたのを聞いたことがあるが、車の金利は他の借金と比べれば安い為、現金を手元に残し車は毎月返済した方が、賢い選択だと言う。だがこれは自分の資産を武器として扱う実業家の様な人々に言える事であって、私の様なサラリーマンは一括で金利0で購入した方がどう考えても得だと思われる。


 一度はまったら抜け出すことは難しい借金。借りた側は寝ても覚めても頭を借金で埋め尽くされてしまう。だが、そんな借金を合法的に踏み倒せる政令が1297年に定められた。本日、2017年3月6日は『永仁の徳政令』が敷かれた日である。


 永仁の徳政令は、鎌倉幕府が増えすぎた幕府内での訴訟を取り消す事を目的とし定めたが、これが大反発を呼び、第一条と第三条の裁判の再審請求禁止と民間の金融業者の訴訟禁止が翌年廃止され、第二条の御家人が質入した土地はタダで取り返すことができる、借金帳消しのみが残る事になる。


 今現在でも、自己破産と言う最終手段で借金を取り消すことは出来なくもないが、その後には車にも財産にも金額制限がかかり、旅行は禁止され、破産者名簿に載っている間は借金が出来ないなどのデメリットが付きまとう。


 今、少しでも借金のある諸君らは、徳政令を待たず、現実的に僅かずつでも返済し、完済を目指した方が良さそうだが、分かっていてもうまくいかないのは借金大国と言われる日本に生まれた性なのかもしれない。




 今日は山陽特殊製鋼戦後最大の倒産、永仁の徳政令、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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