2月13日 苗字制定記念日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 日本人であるならば、自分自身を示す名前を姓と名から持っているはずだが、はたして諸君らは自分の苗字を気に入っているだろうか。どんな苗字にも地名であったり、繁栄の意図を組んだりとその由来がある。本日はそれらを調べ、せめて自分の苗字の意味を知ると、今後の人生に役立てられるかもしれない。2017年2月13日は『苗字制定記念日』である。


 1875年の2月13日、「平民苗字必称義務令」と言う太政官布告を明治政府が出した。1870年の9月19日に「平民苗字許可令」が出され、平民も苗字を持つことが許されてはいたが、その5年後になぜわざわざこんなものが出されたのか。それは税金を課せられることを恐れ、貴族や武士とは違い、それまで平民が苗字を名乗ろうとしなかった為である。


 約17万種ある中で、最も多い苗字と言えば『佐藤』である。日本におよそ200万人程の佐藤さんが存在しており、諸君らの知り合いの中にも、あるいは自身が佐藤さんだと言う者も少なくないはずだ。バランスを取るために鬼ごっこで数を減らされても文句は言えまい。

 逆に希少な苗字と言えば、勘解由小路かでのこうじさんや、邪答院けいとういんさんなど、一世帯しか存在しない珍しい苗字の人もいる。ぱっと見、西尾維新作品に出てきそうな苗字だが、ちゃんと実在する苗字だ。


 苗字と言えば、私が幼き頃は、英語で自分の名前を綴る際、苗字と名前を入れ替えて書くように教えられた。例えば田中太郎と言う名前ならば、Taro Tanakaと言った具合である。だが、最近の教科書では逆転させず、Tanaka Taroと表記させる事が多くなっているそうだ。これは、要するに外国で名乗る際、ファーストネームとラストネームの関係で逆転させていたわけであり、その理屈はなんとなくわかるのだが、一つおかしな点がある。


 例えば大統領に就任したドナルド・トランプ氏である。彼の父親は、フレッド・トランプ。つまりはトランプが苗字で、ドナルドは名に当たる。だが、もし仮にトランプ大統領が来日したとしても、あらゆる書類にドナルド・トランプと明記するだろうし、マスコミもそう表示している。

 なぜ日本から海外に行くときは逆転させねばならぬのに、海外から日本に来た場合は逆転させないのか。実際にホテルの予約をする際などは、逆転して書いてもそのままでも問題なく予約がとれるそうだ。


 メジャーに渡り、イチローと言う名を世界に広めた男がいる。もし苗字と名前を逆に登録していたのなら、ユニフォームに書かれていたのはSUZUKIと言う名前だったのかもしれない。




 今日は苗字制定記念日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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