1月22日 カレーの日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 私は今まで生きてきた人生の中で、これが苦手だと答えた人間に一度しか出会った事が無い。日本国民に広く慕われ、愛され、食べられ続け、米は当然のことながらパン、うどん、パスタにナン。ありとあらゆる炭水化物を受け入れる器の広さ。高級店からチェーン店、はたまたレトルトから愛情を込めた物まで、幅広い分野で老若男女を楽しませてくれる神のレシピ。そう、本日2017年1月22日は、『カレーの日』である。


 本日がカレーの日と呼ばれる所以は、1982年、学校給食35周年を記念し、全国学校栄養士協議会が1月22日に一斉に給食にカレーを出したことにある。

 今思えば、カレーをほおばりながら牛乳を飲むと言う狂気に満ちた食事であったが、それすらも気にならぬほど給食のカレーは美味であった。丸食缶にカレーが残っていた記憶は私には無い。今更だが、給食センターの職員さんに感謝の意を表したい。


 ところで、今やどこでもいつでも食べられるカレーだが、諸君らはどこのカレーがお好きだろうか? レトルト? 有名チェーン店? 牛丼屋?

 答えは多岐に別れるだろうが、私がこの質問を受けたのなら、真っ先に思い浮かぶのが実家の母親が作ったカレーである。


 当然ながらスパイスを調合し、油で香りを引き立てるような本格的なカレーではないし、隠し味にリンゴやはちみつを入れているわけでもない。スーパーに売っている普通の固形ルーを溶かしただけのお手軽なカレーである。だが言わせてほしい。私はこのカレーが世界一好きなのである。

 カレーの本場がインドであると言うのは、あまりにも有名すぎて今更語るまでもないが、それでは、諸君らはインドカレーを食べた事があるだろうか。


 ある日、私はインド料理専門店へと足を運んだ。席に着くなり、明らかにインド人だと思わせる風貌の店員が私の席へと歩み寄る。私は好物のカレーとライスを注文し、ワクワクしながら本場のカレーが届くのを待っていた。

 暫くすると、店員が料理を運んでくれた。私はスプーンを手に取り、それを口へと運ぶ。確かに旨い。だが、そのカレーは私の期待するほどではなかった。と、言うよりは、私の知っているカレーでは無かったのである。ルーはサラサラとしてるし、後味はピリピリと辛い。確かに旨い。だがやはり、旨いのになぜか私は納得できなかった。


 後で調べて分かった事は、市販の固形ルーは、本場インドの味に近づける事を目的とせず、日本人の味覚に合う様に味が調整されているそうだ。私は好きだが、逆にインド人がそれを食べたら、やっぱり口に合わないと感じるのかもしれない。本場インドのカレーと日本のカレーは完全に別の料理と化しているのだ。

 ベトナムやタイにもカレーは存在するが、日本のカレーが世界に注目される日を私は心待ちにしている。




 今日はカレーの日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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