1月9日  風邪の日

 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申す者だ。


 諸君らは今日と言う日を如何にお過ごしだろうか。日々は刻一刻と進む二十四時間の連鎖であるが、それは円環ではなく螺旋であり、繰り返しではなく積み重ねである。だがしかし、中にはどうもそれを理解していない者が多い。

 私の話を聞き入れ、今日と呼ばれる日が先人達が積み重ねた如何なる日なのかを知らば、諸君らの過ごす毎日にも色が付くのやも知れぬ。




 いやはや、近頃めっぽう寒くなってきた。諸君らは健康を維持できているであろうか。この時期に半袖短パンで寒空の下を走り回るなんて言う自殺行為は、箱根駅伝の選手か小学生にしか許されない。一般人がそんな事をすれば、たちまち熱を出し、寝込んでしまうだろう。本日2017年1月9日は、『風邪の日』である。


 本日が風邪の日と呼ばれるようになった所以は、1795年の1月9日、当時の横綱であった谷風梶之助氏が流感により亡くなった為である。今では流感と言っても何のことだかわからないだろう。無理もない。なぜなら、今ではそれをインフルエンザと呼んでいるからだ。


 谷風梶之助氏は、亡くなる10年程前に、「土俵上でわしを倒すことはできない。倒れるのは風邪にかかった時くらいだ」と公言したと残され、実際に風邪が原因で亡くなってしまった。このセリフから、そして死因から、当時のインフルエンザが多くの人に恐れられていたと見て取れる。


 1795年、この事からその当時に流行したインフルエンザは『タニカゼ』と呼ばれた。それから22年経ち、飛躍的に医学が進歩した今日この日だからこそ、我々は今再びインフルエンザの危険性を再認識せねばならない。

 確かに、過去と比べインフルエンザへのワクチンや抗インフルエンザ剤などにより、人類はその難敵に対処する術を得た様に見える。だがしかし、残念ながら今なお、インフルエンザにより死亡する人は絶えないのである。


 決してただの風邪と思って甘く見てはいけない。

 初期症状があらゆる病気と似る事や、他の病気を併発しやすい事から、風邪は万病の元だと古来より言い伝えられている。

 だが、私の見解は違う。

 風邪など引いたところで命までは取られない。と言う甘えこそが万病の元であると、先人たちが我々に警告している様に聞こえるのだ。


 予報では今日もかなり冷え込むらしい。

 外に出るときはいつもの服装にもう一枚重ね着をし、体を冷やさない様心がける事を諸君らにお勧めする。




 今日は風邪の日、特別な一日である。

 我々は本日を祝福し過ごさねばならないだろう。

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