83 ジャンプ、月、エアコン
室外機が唸る音が聞こえる。今晩は寒かったからな、あれ、エアコンは切ってきたっけ。そうは思っても時間ギリギリの登校、立ち止まるわけにはいかない。景色はまだ影と闇のグラデーションが濃い。なのに痛覚はむしろあそこの月みたいに鮮烈だ。遠い学校に通ってから満員電車と冬の朝がますます嫌いになった。
住宅地を足早に抜けて大通りに差し掛かったとき、通りの右からサッと赤い光が道路を走った。それだけで視界は息を吹き返すみたいに色味を増した。手をかざして見ると、どこかのビルの影から真っ赤な光が滲みでている。反対を見ればオレンジ色の満月が薄紫の空に浮いていた。太陽と月、ちょっとかっこいい。いい気なもので少しだけ気分が良くなって、いや無性に元気になってきて、小さくジャンプした。教科書の入ったカバンが揺り動かされて足を直撃する。
やっぱり冬は嫌いだ。
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