84 眼鏡、花、刺客

「飛鳥組がおかしな刺客を雇ったらしいぜ」

「おかしな刺客?」

「なんでも花が好きで殺しの現場にいつも花を持って行くとかいう奴らしい」

「漫画みたいだな。そんなんで捕まらないのか」

「変装も上手いらしいぜ」

全く訳のわからない奴が増えたものだ。俺はトイレということにして少し離れた。


トイレの前を通りかかると清掃の婆さんが大きなバケツを持って出てきて、俺に世間話を仕掛けてきた。いつまでたっても話を切り上げないし威圧的に睨んでも見て見ぬ振りをするので、強引に話を打ち切って逃げようとすると、最後だからとバケツの片付けの手伝いを押しけられてしまった。この婆さんはヤクザなど怖いもののうちに入らないらしい。


帰ってくるとドアから甘い匂いが漏れ出ていた。不審に思って扉を開ける。部屋の中央に死体が横たわっていた。よく回る口は頭ごと胴から切り離されている。異様なことに顔は安らかで、断面からは色とりどりの花が生やされていた。

眼鏡に知らない女が写っていた。この匂いがキンモクセイのものだと気付いた時、首に冷たいものが当たった。

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