72 裸足、撲滅、逮捕
歯磨き撲滅委員
外で頭のおかしい奴が叫んでいるらしい。昼間だというのに何人かが口喧嘩をする声が聞こえる。ようやくの休日で目覚めがこんなとはツイてない。
俺が顔と口の中の老廃物を洗い落としているとチャイムが鳴らされた。しかも何度も。この時俺は寝ぼけていて、荷物の受け取りか何かだと思ってドアを開けてしまった。冷静に考えれば、いくらいつもの配達員がクソだからといってチャイム連打はするはずがないと分かるだろうに。
「歯磨き撲滅委員会の者です。御宅のハミガキを回収しに来ました!!」
ハゲ頭に小さい目、半袖シャツからのぞく体は妙に筋肉質でありながらスポーツマンの爽やかさは全くない。ディズニー映画のドジな盗賊がそのまま脱走して来たような大男だった。それが今俺のアパートの前に立っている。
「ええとあの人違い……」
「没収しま!!!」
この声には聞き覚えがあった。さっき騒いでいたのはこいつだったんだ。
そいつは裸足のままズカズカ入り込んで行き、洗面所を荒らしまくって歯ブラシとチューブ類を奪っていった。おかげで昼から廊下の雑巾掛けや買い出しに時間を取られ、できたことといえばアニメを違法視聴で2本見るぐらいだった。
掃除や買い出しの途中に警察が来ていたらしく、アパートの前にパトカーが停まっているのを見た。俺は今日のことを一刻も早く忘れたかったのでカーテンを閉めきってさっさと寝た。
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