53 効果、体臭、コオロギ

 二郎系のような脂っこそうなラーメン屋があったのでそこには入った。中は熱気で満ちて壁や床がしっとりしている。サウナのような臭いに加えて脂ぎった空気で息苦しい。券売機で適当に安くかつカロリーの高そうな味玉ラーメンを注文し、じっとりしたカウンター席に座る。水と橋をとってくると太った男が入ってきて近くのカウンターに座った。すると高温で鈍っていた鼻に刺すような臭気が漂ってきた。くっさ。思わず鼻を抑える。昔生物飼育部の連中がコオロギを飼っているのを手伝ったことがあるが、その時の尿が干からびたような異臭が近くから漂っていた。当然隣の男の体臭である。ラーメンは来たが臭いがきつすぎて集中できない。臭いを消すため玉ねぎとにんにくとネギを大量に突っ込み、鼻息をしないようにしてラーメンを頬張った。しかし息をしなくても臭いは漂ってくるものだ。口の中で熱いヌルヌルしたものが蠢き、体内からにんにく臭が立ち込める状態にコオロギ臭は効果てきめんで、口の中身は胃液と一緒にどんぶりに逆戻りすることになった。

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