10 漁業、探偵、ベトベト

 船の底をこそぐ。ベトベトした死骸が底から剥がれ落ちて沈んでいく。最近では船を出すには定期的なヒトデの除去が必要になっていた。もっとも、海に出たところで魚なんてとれやしないので、近ごろは港の船も整備されてない幽霊船も多い。

ヒトデの大量発生が分かったのは去年の冬ごろだった。その頃はまだ網にヒトデがたくさん掛かるぐらいのことで今程以上じゃなかったが、ヒトデはなんでも食う癖に食えないので問題にはなっていた。

 おかしくなり始めたのは死体遺棄事件があってからだと思う。海岸にボロボロの服が流れ着き、それが行方不明者のものと一致するので海をさらって身元を確認する必要があった。この街の漁師もボランティアで参加した。

結局見つけたのは俺だった。潜っておかしなものを探していると以上発生したヒトデの大群を見つけた。1つの岩に張り付いて体を脈動させていた。それが岩ではなく人間の死体だと気付いたのは一度そこを素通りしてかえってきたときのことだった。それでも骨からヒトデを剥がすために5人ほど手伝いが必要だった。

 被害者はヤクザの不倫調査をしていた探偵だと後で聞いたが、そんなことよりも海岸にヒトデが出てきたことが問題だった。したいで味をしめたのか、海岸や港はヒトデだらけになり、ドロドロに溶けたヒトデの死体で覆われた。海底にもヒトデは押し寄せ、殺せぱ殺すほど毒が吹き出し魚は寄り付かなくなった。

 この街は呪われている。今では船を出すものはいない。この間には異常成長したヒトデが海で遊んでいた子供を飲み込んだ事件があったし、下水道を覗くと青や黄色のヒトデがうごめいているのが見ええる。誰も口には出さないが、この街はもうおしまいだとた゜れもが分かっていた。

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