第7話 集落(4)
地下室に入ると、地下室の中はかなり薄暗く、最低限の光源しか確保されていない。
「エルダこっち!」
ソイラが手を振って言う。薄暗い地下室の中でも銀色の髪に愛らしい顔立ちから、村人たちから沢山の視線を浴びていた。声を掛ければいいのにとも思ったが、服装が如何にも周りの村人たちとは違う気品な服を着ていたため、貴族、またはそれなりに地位の高い人と判断したのだろう。声を掛けずにいるようだ。
俺はソイラの隣に腰を掛ける。
さっきの視線の話に戻るが、やましい視線などは一つもないように感じられる。まあ、こんな少女にやましい視線を送るのは、どこぞのロリコンだろうが。地下室の中にいる人たちは、お年寄りか、女性しかいないようだ。確かに若い女性は見かけられるが、子供の姿は見当たらない。こんな危険?かは分からないが、天獣が生息している地域に子供と一緒に暮らすのは、気が引けるのかもしれない。
「エルダ。さっきロイスさんと何話してたの?」
「知りたいの?」
「うん」
俺はソイラの隣に座っているので、必然的に上目遣いなっている。
こうなると答えを言わなきゃいけなくなるので、控えてほしいところだ。本当のことをソイラに伝えることはすこし身が引けるので、少しずらして伝える。
「ロイスさんに地下室寒いらしいから、風邪を引かないよう言われただけだよ」
「そうなんだ」
少しというか、滅茶苦茶ずれたな。思った以上に。ソイラも納得してなさそうだし、ここは話題を切り替えたほうが最善だな。
「気づいたんだけど、火とか燃やしたらけむりが出るのに、なんでこのたいまつからはけむりが出ていないの?」
光源...基、たいまつが設置されてあるが、不思議なことに煙が一切出ていないのだ。
「エルダは、魔道具知らないの?」
頭を横に振る。
「この魔道具は大気中の魔力を吸い取って光を生み出してるの。馬車の中でも言った通り、木や土が魔力を生み出すんだけど、少しの量だけだけど、大気中に放出されるんだって。だから、その大気中にある魔力を取り込んで、取り込んだ分周りを照らすらしいよ?普段は周りを照らすように設定されてないらしいからその分貯めこんでるとか言ってたよ」
「へぇ。すごく便利な魔道具だね」
やっぱり魔道具あったのか。松明の魔道具有能すぎじゃね?でも普段は光を生み出していない分貯めてるって言ってたから、貯めるのに時間が掛かるとか?大気中の魔力しか貯めて、使うことができないとか?でもそれぐらい調整できるのなら、値段とか上がるかもしれないけど、材料?的なのを高価にすれば解決できそうだな。
また答えのない永久ループに入りそうだ。もう既に入ってるが。
「その明かりの魔道具の他にも連絡を取り合うための魔道具とか、料理を美味しく作るための調理器具の魔道具とかで色んなところで役に立ってるんだよ」
「色んな魔道具知ってるんだね。ソイラ凄いね」
生き生きとしゃべり、知識を披露するソイラを可愛いなと素直に思う。
「ま、まぁ、本で少しだけ知った程度だけどね」
目線を一切合わせず、きょろきょろしながら、照れてるソイラ可愛い。ソイラの容姿は前世で言うロシア女性?とかが凄く美人だと聞いたことがあるが(一切見た事が無い、テレビとかで時々見る程度)、そんな人達よりか天と地ほどの差は言い過ぎだけど、それぐらい美少女だ。そんな子が照れてる姿なんて......は!危うくロリコンに!でも、俺精神年齢は高いかもしれないけど、実年齢は低いからそんなロリコンとか言う判定にならないんじゃないか?言ってる俺も見た目だけで行けば、ショタじゃん?なんら問題なくない?
ロリコンの話は置いておいて、やはり連絡を取り合うための魔道具はあったらしい。
魔道具って素晴らしいね。学校の生徒に入って触れられたらいいな。
「ね、ソイラ。学校楽しみ?」
「んー。私のおに...兄さまと姉さまが学校に行ってて、色んな勉強ができるし、友達ができるから楽しいって言ってたのを少し聞いた事があるけど、あんまり興味は湧かないかなー。人脈作りにはいい場所だと思ってたりもするけど、なんかね」
「そ、そうなんだ。ハハッハ」
あまりにも見た目と発している言葉のギャップに乾いた笑みを浮かべてしまう。5歳児でこれほど考えているとか凄いわ。貴族。でも、兄と姉が学校の事を楽しそうに話していたのを聞いたのならソイラが特別賢いだけなのかな?いやー、5歳児侮れないな。
た、確かに人脈作りには学校って適してるよね。すみません。なんか俺自制心低いのかな。自分の私利私欲でワクワクするとか。
「エルダはどうなの?」
「勉強の方にほんの少しだけ興味があるかな。特に魔道具とか。しかも人脈作りは大事だしね」
「友達とか欲しい?」
「友達もいいかもしれないけど、ソイラが近くに居れば充分かな」
「...」
「...」
「...」
「いつぃ」
ソイラと数秒見つめ合って最後には靴底で足を踏みつけられた。
「な、何で?いや、確かに俺も悪かったような気がしないでもないような気もするから、言葉で、伝えよ?」
「女としてやらなきゃいけないと思った」
顔を近づけ、小さな手で拳を作り訴えかけてくる。
「あ、はい。そうですね。良い選択だったと思いますよ」
ソイラは満足げに元居た場所に戻る。
振り返ってみたら、俺なにやってんだろ。普通なら照れて「あ、そう」とかいう場面じゃないのか?この賢い5歳児なら絶対あの意味理解できたのよね?もしかして理解できたうえであの仕打ちなの?女としての勘が働いた結果なのだろうか。しかもさっきの発言は失言中の失言だな。「ソイラが近くに居れば充分かな」とか、自分で言っておいてなんだけど、くっさい台詞だな。何処のリア充に俺はなりたかったのだろうか。
こんな事言ってたら、ただのキモイ何かとして一生暮らせそうな気しかしない。
これからくっさい台詞は言わないようにしよう。それが一番安全だ。
それよりも痛かったな。
ソイラに踏まれた足を摩っているとソイラが近づいて来る。
「ごめんね?いくら女の勘でも悪いものは悪いよね。ごめんね」
「大丈夫。女の勘だから仕方ないよ」
「そうだよね。女の勘だから仕方ないよね」
...なんだろね、これ。不思議なやり取りしてるな。しかも5歳児と。
普通の5歳児ってやんちゃなイメージが凄くするんだけど全く違うな。
他の貴族の子供と会ってみたいわ。
「少し寒いね」
「そうだね」
外は雨も降っており、地下室なのでなおさら気温が低い。
ソイラがそっと身を寄せて、肩に寄りかかる。
スーハー、スーハ―。いい匂い。おっと。また犯罪臭が漂う事を考えてしまった。温まるだけだ。温まるだけ。ああ、いい匂いがする。なんでこういい匂いがするのかな?しかもソイラのわかってるでしょ?みたいな無言の語り掛けてくるような顔可愛いわ。絶対、学校生き始めたら、モテるだろうな。内心の独占欲にびっくりする。まぁ、あくまで付き人だし、
ズドオオォォン
余りの音の大きさに耳を塞ぐ。
音と地響きが聞こえて来てから、地下室に居る村人たちは村長さんの奥さんの合図でブツブツ唱え始める。
「まさか詠唱?」
「多分。強化、付与魔法類の詠唱だと思う。私もできるか分からないけど、やってみる」
ソイラも唱え始めた。
地面から無数の小さな光が地下室を覆いつくし、暖かい光が体に染み込む。
先ほどの薄暗く、肌寒い地下室とは裏腹に今は、とても明るく、とても暖かい。
「幻想的......なんか俺、何もしてなくね?皆精一杯を尽くしてるのに、俺何もしてないな」
子供だからといっても、なにもしないでいると、罪悪感で潰されそうなので、見回りでもしてこようかな。
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