リンとカズの物語

たて こりき

「起」

 私は売り物。

 客の前で愛想良く笑顔を振りまいて、自らをアピールする毎日。

 「ほら私を見て!こんなにスタイルが良くて、目も大きくてかわいいでしょ?」

 周りの子達は自分を売り込む為に必死よ。それはそうでしょ?誰でもこんな店に何時までも居たくはないもの。自由な生活が欲しいはず。

 客層は若いのから年寄りまで様々。皆口々に可愛いだの、綺麗だの言って目尻を下げながら品定めをしている。全く嘆かわしいわ。日本の将来が本気で心配。

 ただ、そんな人達にさえ選ばれもしない私が1番「嘆かわしい」のかもね。周りの子達と比べてブサイクとか云うわけじゃない。どちらかと言えば可愛いはず。あくまでも主観だけど。私は人より自己主張が下手で周りより少しだけ年上なだけ。ふん!結局は世間が若い子を求めてってだけの事よ。くだらないわ。

 そんな毎日辟易していた頃あの子が現れたの。眼鏡を掛けた育ちの良さそうな青年。明らかに私より年下に見えた。私の前からじっと動かない。

 「あんたの様な人の来る所じゃないのよ」

そう思いながら半ば無視を決め込んでいたわ。だってあんなに純粋な目で見られたら、こっちが惨めになる様な気がしたから。


 「俺の所に来るか?」


 えっ……

 耳を疑ったわ。なんでも私?こんな無愛想で若くもないのに……。それにあんたなんかに払えるほどの大金があるとも思えな……

 事態が上手く理解出来ないでいる私を他所にあの子はサッサと支払いを済ませ私を買い取った。


 これが私とあの子の始まりだった。

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