春の惑星

藤堂カナ

第1話 別れ

 一緒に暮らせなくなったので、その子と、その子のお母さんは、和尚さんの所に行きました。その子は今度から、和尚さんと暮らすことになりました。お母さんとは、もう二度と会えません。その子は今度から、小僧さんになりました。


  和尚さんは小僧さんを一目見るなり、寺の鐘突きをお命じになりました。小僧さんはお母さんと別れて悲しかったのでしょう、彼は精一杯お寺の鐘を突きました。


クモオォーン、クモオォーン。


 悲しげな音色が、寺中に、その寺のある町中に鳴り響きました。鐘の音の響き渡る所という所に、悲しみが訪れるようでした。


クモオォーン、クモオォーン。


 それは、彼の悲しみのようでした。


 その日の夜、精一杯鐘を突き終わった小僧さんに、和尚さんは言いました。

「鐘はポジティブに突け!!」

 ゴオォーンと小僧さんの中で、ポジティブな鐘が鳴り始めました。



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る