時ちゃんと私のその後
第10話私と時ちゃんのその後
エピローグ
私と時ちゃんのその後
あれから数日経って奇妙なことが起こる。
近くで行方不明の男の人と女の人の事件。ご近所を自転車で走りまくる警戒態勢のお巡りさん。午前授業が頻繁に行われ、短くなる学校の時間。
そして、時ちゃんのお家に入り浸る警察の人たち。どうやら事件のことで調べたいことがあるみたい。刑事さんもテレビ局の人も混ざって大事になっている。
おかげで、時ちゃんは寝るとき以外、我が家に居るようになり(それを許可したのはお母さんだから仕方ないけど)毎日が騒がしい日々になった。
でもなにも……何一つ、時ちゃんのお家からは事件の手掛かりが見つからないみたいで、一週間が経つと警察は手を引いて、他の場所を捜索した。
いまでも、時ちゃんが怯えた表情で自分のお家を私のお部屋から見つめ、呟いていた言葉が私の頭から離れない。
「こーちゃん……大丈夫かな? 見つからないかな? ちゃんと隠せてるかな? 大丈夫かな? 燃え残しはないかな?」
その言葉に私は首を傾げるばかりだったけど、時ちゃんがずっと不安そうにしてるから、らしくないよって頭を撫でてあげた。綺麗なうなじも触り放題だった。
どうやら時ちゃんは私の知らないことをたくさん知ってるみたい。
別に疑っている訳じゃないけど、やっぱり時ちゃんの観察はつづけた方がいい。
日記帳に思い出せる日だけでも埋めていこうと思う。
時ちゃんはなんで、どうして、何を考えて、生きているんだろう?
あんなに一緒にいる身近な、ペットみたいな存在なのに、日記帳を書いてるとそればかりが頭に浮かんだ。
それを考え続けないと時ちゃんが怖い存在に思えて体が震え出す。
いつか私も? 時ちゃんが私から離れていったらどうなるの? 別の学校に、または別の地域に引っ越すとか、さらには職場が別だとか。大人になるほど道は分かれて、離れるのは必然となる。
ずっと一緒なんて無理だから、今のうちに、少しでも考えておかないといけない。
その時がきたら、私は私でいられるのだろうか。
それを考えると、時ちゃんに支えられて生きている感じがした。そんなわけないのに。
今だけはそう思えるんだ。将来が不安に感じる。
だからこの日記は書き続けなければならない。
時ちゃんが何者であるか、時ちゃんが何をしていたかを記録づけて、いつか私から離れる日が来ても、時ちゃんはこういう人なんだって思い出せるように。
そんな日が本当に来るか分からないけど。
その日を迎えるより早く……しんじゃえば……私はこんな日記を書かなくても、いいのに。
――続く。
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