この素晴らしい(?)世界にオリキャラを!

@shinokara

第1話 この哀れな少年に異世界ライフを!

「内閑光瑠(うちしずひかる)さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど不幸にも亡くなりました。短い人生ながらあなたの生は終わってしまったのです」


「へ?」


目の前に座っている少女に俺は唐突にそんな事を告げられた。


その少女は大抵同い年ぐらいで…綺麗な水色の髪と瞳、スタイルは良好。そして所謂羽衣というものに包まれている。そしてその少女の話と俺の記憶を繋げると…


「つまり…あの時突き落とされた花奈(はな)を庇ったかわりに俺が死んだって事か?」

花奈と言うのは俺の友達であって、過大評価かもしれないがかなりの美少女だった。


だが…出る杭は打たれるとでも言うのか、彼女はその美貌をクラスにいる典型的なお嬢様に疎まれそこから虐めに遭っていた。そして…先ほどその主犯格に屋上から突き落とされたのを二階から見た俺は窓際を蹴って…


彼女のクッションとなった。


そして…

「好きだった、くらいは言っておきたかったな…」

俺はどうやら頭を強く打って即死したらしい。


なら…

「1つ聞いても良いですか?…彼女は」

「大丈夫です。彼女は特に怪我もなく生きてます…そしてその主犯格たちは警察に捕まってるようですね」

「そっか…なら良かった」

もしこれで彼女まで死んだならそれこそ無駄死にも良いところだ。


それを聞いて不幸中の幸いと少し落ち着いたのを見たその少女は。


「そしてあなたには今、3つの選択肢が迫っています。

1つは天国で老人のように過ごす事…そしてもう1つは人間として生まれ変わる事。最後の1つは…異世界に向かう事です」

いきなり漫画みたいな事を言い出した。


「…いきなりすぎてよくわかんないんで1つ1つに対する説明をもらえますか?後あなたは誰ですか?」

「あ!これは…もう良いわ!これは失礼したわね…私はアクア。日本で若く死んだ人間を導く女神よ」

あれ?なんか急に口調が砕けたぞ?

「そんな緊張しなくても良いわよ?」

は?自称かもしれないけど女神でしょ?


「1つはまぁ先人達との世間話しかない所で…もう1つは人間として生まれ変わる代わりに別の人としてだからあなたの記憶が消えるわね」

まず1つ目は楽しくなさそうだから嫌だし…2つ目はなんか複雑な気分だ。

同じであって違う存在…生まれ変わるとして赤ん坊からだろうしなぁ…今までやれた事ができなくなると言うのがね…

「…で?3つ目の選択肢は何だよ」

向こうが楽にしろって言ったなら是非ともそうさせてもらう。

「それに答える前に質問よ。あなた、ゲームは好き?」

「まぁ…RPGとかは好きだけど」

これでもゲームとラノベを嗜む普通の高校生だ。

「なら、そんなあなたに良い話があるのよ」


そしてその女神?…アクアは告げた。



「貴方、異世界で英雄になってみない?」

ファンタジーごっこでもするの?



胡散臭いという俺の視線をものともしなかったアクアの得意げな説明を要約するとこうだ。


典型的なファンタジー世界で大規模な人口減少が起こっているのでそこに死んだ若者を異世界語を習得させつつその他の記憶とかはそのままにして送り込もう!と言う事になってるらしい。

そして即死対策として何か一つ特典をあげるって訳だな。


まぁ前二つよりかは良さそうだ。少なくともファンタジーの世界で生きていけるなんて普通できないし。


「…ならそれにするよ」

「わかったわ。ではこのカタログの中から「但し!」…何よ?」

「花奈は何処に?」

「あなたの遺体のそばで1人泣いてるわ」

「…その特典とは別口の願いとして花奈と話させて欲しい」

「…理由は?」

「…誰か別の人の慰めに意味はないと思うから、かな」

そうだ。誰かを失って泣いてる人にその場には居合わせなかった他人が慰めをかけても意味はない。


「…分かったわ。流石にあなたの場合は不憫すぎるしその願いは特別に叶えてあげるわ」

「ありがとう…やっぱ女神なんだな…」

「やっぱって何よ!その願い取り消すわよ全く…ほら、あんま時間取れないからさっさと話しなさい!」

「はーい。…花奈!」


そうして俺は手渡されたマイクに向かって声を発した。


ハナside


某所病院、霊安室。


屋上から突き落とされて殺されそうになった私を庇って私の好きな人が死んだ。


その私を突き落とした人達はすぐに警察に連行されていった。


それでも…彼はもう戻っては来てくれない。


私の初恋は…最悪の形で終わりを告げたのだ。

その事に枯れたと思った涙がまた溢れた時…


花奈!


「光瑠⁉︎」

思わず彼の顔を見るが布がかけられたままだ。でも…あの声は光瑠の声だ。


花奈!聞こえるか?


そしてもう一度聞こえた声は…私の頭に響いた。

「光瑠…?」


良かった…花奈が無事で。


「やめて!私が殺した…。それなのに…」


いや…良いんだ。あの時…花奈が死んだのを黙って見てたとしたら俺は多分一生後悔してたかもしれないしな。むしろお前が生きてただけでも…


「そんな…そんな事!」

…て言ってもお前は納得はしてくれない事は知ってる。だから…もし、俺を殺してしまった事に罪悪感を感じてるなら俺と約束をしてくれるか?


「え、あ…ええ! 私…私にできる事なら!」

ありがとう…なら。



生きてくれ。


そしていつか会う時が来たら…その時は色々な話し聞かせてくれ。だからと言って死に急ぐ事もないけどな。


それが…俺がこの世にいる間で最後の願いだ。

「うん…私なりにだよね?」


あぁ…俺らしく花奈らしくだ。


「…分かった。光瑠」


頼むぜ…それじゃあまた何処かで。後、お前と会えて良かった。

「うん…さよなら」


それっきり光瑠の声は消えた。でも…もう涙は流れてなかった。

「私も…光瑠に会えて良かったわ」

いつか光瑠と話すその時まで…私らしく生きる。



それが、あの人への恩返しで、あの人とのたった一つの約束だから。



ヒカルside

「ふう…」

会話が終わったので、マイクを返そうとすると…


「グズ…エグッ」

「って、何でお前が泣いてんだよ」

何故か目の前にいるアクアが泣いていた…しかもガチ泣きだし。

「いや…こんな感動する話映画にもないんだもの…」

「女神が映画見るのかよ⁉︎…まぁ良いや。で、一応異世界に行く特典決めたんだが」

「フグ…何にするの」

「この…スタートダッシュセットってのが良いな」

「…これ?いや、こんなのじゃなくても伝説の武器とかあるわよ?」

「いや…強い武器あったって金とかアイテムないとどうにもならないしな」

ゲームでも、冒険前にしっかり装備とか揃えたいタイプなのだ。

「前来た人間は即座に1番強い魔剣を持ってったのに…まぁ分かったわ。ならせめてお金はオマケしておいてあげるわ。で、系統スキルはどうするの?」

「へ?」

「このスタートダッシュセットにはお金10,000エリスに基本的なアイテム。基本的な装備や武器にオリジナルな系統スキルと言うものがあるのよ。そしてそれに応じてステータスの割り振りや武器が決まるのよ…であんたの場合はちょっとオマケとして15,000になるって事」

つまりこれといってすごいものはない代わりに一通り必要なものが揃ってると言う感じ…まさに渡りに船だ。

「…成る程。で、その系統スキルってのは?」

「一つの技からどんどん枝分かれしていくみたいなものよ」

樹形図みたいなもんか。

「へぇ〜。ならこの光雷槍スキルにするかな」

「オーケー…では!これで全ての準備が完了したので早速送るわ。魔王討伐の勇者候補の1人として。そして魔王を倒した暁にはどんな願いでも一つだけ叶えてあげるわ」

な…⁉︎そんな美味しいものがあるなら生き返ろうか…いや。ああ言った手前それは無いかもな。


そして…

「さあ勇者よ!願わくば、数多の候補からあなたが魔王を打ち倒す事を祈っているわ。……さあ、旅立ちなさい!」




アクアのその叫びとともに俺は明るい光に包まれた……!







次に目を覚ましたのは…

石造りの街中。


広大な草原。


何処までも喉やかな青空。



そして『駆け出しの街アクセル』とある看板…まるでゲームの最初の街のようだ。

てかまんまそれだ。



「本当に異世界に来たのか…!」

思わず弾んだ声が出てしまい周りの目が妙なものになったので自粛。



「取り敢えず貰ったアイテム…何があるのか確かめるか」

という事で近くの小川の近くでポーチの中を広げた。

「財布に回復薬…火打石にナイフとかハサミとかがいっぱいついてるやつに砥石。後はペンとメモ帳に非常食か…」

何ていうかサバイバルセットを彷彿とさせる。

近くに街もあるしそこまでサバイバルする気はないのだが…まぁ良いか。なんか役に立つ時が来るだろ。

そんな風に中身をチェックしている中で気づいたのだが…

「この鎧…AX-00のカバーフレームだよな」

恐らく俺のスキルに合わせてこうなった、と言ったところだろうか?あと、もちろん武器は鋼鉄棍…かなりの再現度が高く個人的にもびっくりである。

でも何故ダンボール戦機リスペクト…まさか、この世界の鎧ってそう言うのが多いのか?


そうした疑問を孕みながらも、しばらく物色していた荷物を白いショルダーバックに戻した俺はおもむろに立ち上がる。

「街に戻るか…こう言うのだとギルドかなんかあるはずだし」


そうしてさっき来た街の入り口に戻った俺は…絶句した。




何故かって…?



「あああああああああーっ!」

「うおっ!な、何だよ、やめろ!…」


さっき俺を送り出したはずの女神、アクアが何故かジャージ姿の俺と同年代の男につかみかかっていたからだ。



「何事?」

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