第8話 告白の行方
「好きです! 俺と付き合ってください!」
立ち上がって正面から勢いよく頭を下げられ、俺は一瞬、言葉を失った。直球にも程がある。クスリと一つ漏らすと、下げられたままの京のブラウンの前髪が揺れた。
「やっぱり……」
「ん?」
「やっぱり、男だから駄目ですか……? 気持ち悪い?」
語尾が微かに震えていた。正攻法できたから度胸があると思ったが、そうではなかったようだ。そんな事でさえ愛しいと感じ、俺は目の前にある京の髪を撫でようとした。が、スッと身が引かれると、脱いだ下駄はそのままに、海に背を向け走り出した。
「すみません、忘れてください……!」
「おい! ちょっと待て!」
俺も慌てて立ち上がって追いかけようとする。が、京が浴衣の裾と砂に足をもつれさせ、その必要はなくなった。後ろ姿の京を抱き起こすと、両の掌で目元をおおってしまう。
「まだ返事してないだろ」
「でも真一、笑って……」
「顔見せろ」
僅かに抵抗があったが、手首を掴んでゆるゆると開くと、大きな黒目がちの瞳がしっとりと潤んでいた。その瞳を見つめ、俺は甘く囁いた。
「……よろしくお願いします」
「えっ」
自分から切り出したにも関わらず、京はひどく驚いたカオをしてみせ、その後、耳の先まで赤くなった。
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