シン・ネン
@dekai3
第1話 その餅、黒き衣をまといて
20××年 12月23日 PM11:28 富士秘密研究所
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「はは、やった!やったぞ!!」
公私共に忙しくなる師走と言われる年の暮れ。
富士の樹海の奥地に建てられた秘密研究所(ここで入口に設置してある『秘密研究所』と書かれたプレートが映る)内の実験棟にて、白衣を着た男がモニターを見ながらなにやら叫んでいる。
彼の名は尾庄克朗(おしょうがつろう)。遺伝学の権威であり次のノーベル章に一番近い男と言われた研究者だ。
その研究は多くの人命を救う研究とされており、世界中の人間が彼の研究が成功するのを祈っていた。
しかし、彼はとある事件を境に公の舞台から姿を消し、大学から多額の研究費をせしめて行方をくらました犯罪者としてその名を轟かせている。
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「成功だ!やはり新米ではダメだったんだ!!」
その事件とは『年始の白い悪魔』と呼ばれる物体によって起こされた大量殺人事件の一つであり、彼の妻である尾庄勝子(おしょうがつこ)<旧姓:緒持勝子(おもちがつこ)>がその犠牲者の一人となった事件である。
この事件が起きてから尾庄克朗は大学の研究室へ行かず自宅に篭るようになり、いつの間にか行方をくらませたという。
その彼が、この秘密研究所で一体何を行っているのだろうか。
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「さあ!後はこいつに君の遺伝子を入れるだけだ!そうすれば君は新しい生命体として蘇る!!」
この秘密研究所に設置された核融合炉のタービンを利用した全自動餅つき機。
研究所の大半を占める作業室に並ぶは樹齢300年以上の欅を使用した臼。それと同じ欅を使用した杵を一つの臼に10本用意し、腰の入った工業用アームで秒速10回の高速突きを行う。
そして違法改造により千手観音と化したペッ○ーくんによる神速のアーム捌きで全ての臼の仲の餅をいい感じにひっくり返している。
餅をいい感じにひっくり返すにはどうしても人の手を模したアームが必要だったため、富士の樹海に違法投棄された大量のペッ○ーくんを使用したのだ。
尾庄克朗は核融合全自動餅つき機によって出来上がる大量の餅の山に近づき、懐から彼の妻だった尾庄勝子の名前のラベルが貼られた注射器を取り出す。
そして、その注射器を詰みあがった餅に突き刺し、中身を注入した。
注射器の中身を注入された餅はその身を震わせ、急速にぷくぅっと膨れ上がり始める。
「これで、また君に会える!これが神様からのクリスマスプレゼントだ!!」
もちはどんどん膨れ上がり、作業室の大半を飲み込んでもその勢いを止めない。
喜びの声を上げた尾庄克朗は、自らも餅に飲み込まれていくのを嬉々とした表情で眺め、抵抗する素振りは見せない。
やがて、餅は秘密研究所の全てを飲み込み、富士の樹海の一角を白く染め上げた。
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