第588話社は(8)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


長い月日が過ぎて、また唐の帝から難題が持ち掛けられました。

ぐにゃぐにゃに曲がった菅玉で、真ん中に穴があいていて、しかも左右に口が開いている小さなものを、わが朝の帝に献上して来て、

「これに紐を通していただきたい、唐の国では誰でもできる簡単な事ではありますが」

と、言葉も添えられてありました。

受け取ったわが朝の、たくさんの上達部や殿上人、世の人は、

「今度だけは、どのようなすぐれた名人上手でも、どうにもなりません」と困り果ててしまったので、中将は以前と同じに、両親のところに出向いたのです。

そして「これこれしかじか」と相談すると、親は

「大きな蟻をまず捕まえて、二匹ほどの蟻の腰に細い糸を結び付けて、その細糸にもう少し太い糸を結び付けて、反対側の口に蜜を塗りなさい」と教えてくれた。

中将は、その教えの通りに帝に申し上げて、糸を結んだ蟻を入れると、蜜の香りに引き寄せられて、蟻は本当にすんなりと反対側の口から出て来ました。

そして、わが朝はその糸の通った玉を唐の帝に届けたのです。

それ以降は、唐の帝は、「やはり日本の国の人は賢い」とのことで、知恵試しのようなことはしなくなりました。


清少納言先生:はい、そこまで。

舞夢    :これが「蟻通し明神」の説話なのですね。

清少納言先生:その通りです。なかなか、笑える仕掛けです。

舞夢    :年輩者の知恵が、ベースなのですね。

清少納言先生:そうですね、大切なことです。


※社は(9)に続く。








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