第486話宮にはじめて参りたる頃(9)

清少納言先生:続きをお願いします。

舞夢    :了解しました。


伊周大納言様は、果物を召し上がりになり、その周囲を明るくされ、中宮様にもおすすめになります。

そして

「御帳の後ろに誰かいるようですが」

と、女房にお聞きになる雰囲気です。

女房のうちの誰かが、伊周様に何か、その気になるように仕向けたのでしょうか。

伊周様は、座を立ち上がって、私の方に向かってきます。

私としては、この状態でも、伊周様は結局は、どこかに行ってしまうのだろうと思っていたのですが、そうではなくて、私のすぐ近くにお座りになって、話しかけてこられます。

伊周様は、私が宮仕えにあがる前からお耳に届いていた噂などについて

「あのお話は本当だったのか、そんなことがあったのか」

などと話しかけてくるけれど、その前に御几帳を隔てて、遠くから拝見してる時でさえ気後れしていたのに、予想外のことで差し向かいで対座しているなど、とても現実におこっているとは、考えられないのです。


宮にはじめて参りたる頃(10)に続く。

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