第471話ある所に、何の君とか

清少納言先生:今日は、人から聞いた風流な男性のお話です。

舞夢    :了解しました。訳をしてみます。


「あるお屋敷、つまり何がしの君という女性のところに、君達とまでの身分ではないけれど、当時の世間では風流を極めたと評判を取り、物事の風情をよく解った男性が九月の頃に通っていったそうです」

「翌朝になり、有明の月が一面の朝霧に霞み、風情にあふれる時期でもあったので、自分が去った後の逢瀬の余韻を、女性に忘れられないようにと、男性は言葉を尽くして別れを述べて去っていったようです」

「女性も、今はその男性も去っていったことだろうと、男性の姿が見えなくなるまで見送っているのですが、その雰囲気が心にしみるような風情にあふれているのです」

「ところが、その男性は立ち去るような雰囲気を見せながら、実は戻ってきていて、立蔀の間、蔭の方に添って身を隠し、どうしても立ち去り難いと女性にもう一度、熱い想いを伝えようと思っているようです」

「女性は、『有明の月ありつつも』と、小声で口ずさみ、簾の隙間から外をのぞくのですが、女性の髪の毛が、頭の地肌に従わず、灯をともしたように頭が輝いてしまって、そのうえ月の光でますます輝いてしまった様子です」

「男性は、その輝きに驚いてしまって、即座に帰ってしまったとのことです」

そんな話を他人から、聞いたことがあります。


清少納言先生:はい、ご苦労さま。

舞夢    :逢瀬は素晴らしいけれど、有明の光が、余韻を断ち切ったのでしょうか。

清少納言先生:まあ、そんな感じですね、程々がいいのかも。


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